[登場人物] はたかぜ:♂、主人公 紗那:♀、主人公の師匠、聖騎士団副長 月也:♂、紗那の育ての親、聖騎士団団長、引退してもいい歳 教皇:♀、ラヘルの象徴 オッキ〜:国家転覆を狙う秘密結社「終ノ円舞曲」の幹部 朱鷺弥:「終ノ円舞曲」の戦闘員 兵士A・B:聖騎士団所属の兵士 春風:はたかぜを慕う若い聖騎士団兵 「終ノ円舞曲」は「ナハト・ワルツ」と読んで下さい 一応ドイツ語だけど文法合ってるかは気にしない わーい、厨ニ病フル稼働だわ ------------------------------------------------------------------------------------- プロローグ【はたかぜ・紗那】 ------------------------------------------------------------------------------------- 道化 【暗転】 此処は豊穣の女神フレイヤを主神として奉るアルナベルツ教国。 その首都である「ラヘル」。 皆さんが知っている「ラヘル」とは違う時代。 皆さんが知らない其処に暮らす人々の、 今後も知る事は無いであろう人々の物語。 さぁ、幕を開くと致しましょう。 【SolidChain】開演――― はたかぜ・紗那板付き 道化 【溶明】 はたかぜ だーっ!だめ、もうダメ! ちょっと休憩させてくれよ…。 紗那 その程度で音を上げてどうするかね。 私は君に楽をさせるために拾ってきたわけではないぞ? はたかぜ そりゃそーだろうけどよぉ…。 こんな、ズブの素人にいきなり剣の訓練とか…。 紗那 大丈夫だ、君はなかなか筋が良い。 この分ならすぐに腕を上げて一流の騎士となるだろう。 はたかぜ それまでこの地獄に耐えれればな…。 紗那 地獄と言ったかね?はははは、この程度で地獄と言うか。 はたかぜ 笑い事じゃないっての…。 紗那 まぁその内慣れるだろう。 それに、またあそこに戻る気は無いだろう? はたかぜ そりゃあな…。オレだって自分からあんたについてきたんだ。 今更逃げ出すような事はしたくない。 紗那 その心意気だ。頑張りたまえ。 はたかぜ しっかし…本当にオレなんかがいっちょ前になれるのかね。 紗那 それも、君の心次第だ。 何事も足踏みだけでは前に進む事はできない。 向上心を忘れてはいけないのだよ。 はたかぜ 御高説どーも。はぁ…んじゃちょっとだけ休憩させてくれ。 そしたらまた再開するさ。 紗那 言ってる傍から…まぁいいだろう。 昨日より弱音が少なくなっている、進歩してると見ていいだろう。 はたかぜ そりゃ褒めてるのかね…。 紗那 半分くらいはな。 はたかぜ なんだそりゃ。 紗那 もう半分はもっと頑張れ、と言った所だろうか。 はたかぜ うへぇ…まぁ、頑張りますよ。 拾ってくれた恩を返す為にもな。 紗那 恩を着せたつもりはないのだがな。 ま、それも良かろう。 何か目標があればこそ人は前に進めるものだ。 はたかぜ …なぁ、あんたの目標ってなんだ? 紗那 私の目標?そうだな… この剣で、フレイヤ聖騎士団の一員として この剣が折れるまで民を護り続ける事だろうか。 どんな強大な敵にも屈しないよう、その為に鍛錬は怠りはしない。 それと、私の事はマスターと呼べと言ったろう? はたかぜ んな細かい事…。 紗那 何か言いたい事でも? はたかぜ …なんでもありません、マスター。 紗那 まぁ、いきなり変われと言っても酷だろう。 少しずつ、様々な事に慣れていけばいい。 はたかぜ そんなもんかね。 紗那 そういうものだ。 さて、そろそろ休憩もいいだろう? 続きをしようか。 はたかぜ はぁ…よろしくお願いします。 紗那 そうだな…軽く模擬戦でもしてみるか。 得物は今持っているそれでいいだろう。 はたかぜ …え、ちょ、ちょっと待て! こっち木刀だけどそっちのどう見たって真剣じゃん! 紗那 大丈夫だ。怪我はするかもしれないが死にはしない。 というか今ここで死なれても困るからな。手加減はしよう。 はたかぜ いやいやいや、そんなんで斬られたら生半可な傷じゃないって! 紗那 だから私の斬撃を全て受け切ればいい話だ。 はたかぜ んなことできるかー!! 紗那 いちいち五月蝿いな、君は。 そっちから来ないならこちらから始めるぞ! はたかぜ あーもー、逃げるが勝ち! はたかぜ上手はけ 紗那 あ、待て!逃げるのは騎士道に反する行いだぞ! 紗那上手はけ 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------------------------- 第一章【はたかぜ・紗那・月也】 ------------------------------------------------------------------------------------- はたかぜ・紗那板付き 道化 【溶明】 はたかぜMB はたかぜ ひゃ…く、っと。 紗那 ご苦労。とりあえず素振りは終了だな。 はたかぜ レモン連打じゃないとSPが…。 紗那 何か言ったかね? はたかぜ ナンデモナイデス。 紗那 ふむ…丁度昼食の時間か。 一度休憩にしよう。 はたかぜ ふー…りょーかい。 紗那 今日もまた昼食は食堂かね? はたかぜ んー…まぁ多分ね。 マスター奢ってくれる? 紗那 甘えるな…と言いたい所ではあるが。 特に何を食べるか決まってないのならこれをやろう。 はたかぜ …? 弁当?どうしたんすかこれ? 紗那 私が作らないで誰が作ると言うのだ。 はたかぜ …え、マスターが!? 紗那 何故そこまで驚く。 これでも私は自分の食事は自分で作っているのだぞ。 はたかぜ へー…意外。 紗那 意外とはなんだ。 はたかぜ いや、その…マスターでも女らしいとこあったんだと…。 紗那 文句があるなら食べなくていいが? 事務所長にでもあげてくるとしようか。 はたかぜ いや、食べます貰います頂きます! うめー、この玉子焼きちょーうめー! 紗那 はぁ…まぁいいだろう。 私は少し今の時間で書類を片付けてくる。 事務所に居るが余程の事でなければ呼ばないでくれ。 はたかぜ わかりまし…ぐっ!?ん…ぐ…! 紗那 まったく、慌しく食べるから…。 ほら、お茶だ。 はたかぜ んぐ…ごく…ごく…ぷはぁー。 死ぬかと思ったー…。 紗那 それでは私は行ってくる。 休憩中はゆっくりしていてくれ。 午後からはまた訓練を始める。 はたかぜ うへぇ…了解しましたー。 紗那 ではな。 紗那下手はけ はたかぜ うーむ…あのマスターが弁当をなぁ。 なんともまぁ、女の子らしい可愛いお弁当で…。 なんつーか…滅茶苦茶意外! って本人に言ったらどうなるか…あ、もう言ったか。 月也上手入り 月也 よぉ、若いの。 はたかぜ んぁ、おっさんじゃねぇか。 月也 おっさんは無いだろう。 騎士団長である自分にそんな口の利き方するのはお前ぐらいだな。 ま、いいだろう。 はたかぜ いいのかよ。 月也 まぁ…あまり気にするな。白髪増えるぞ? はたかぜ 大丈夫だ、まだ若い。 んで、その騎士団長様がなんでこんなとこに? 昼飯食わなくていいのか? 月也 天気がいいからな、たまには外で食おうと思って出てきたんだ。 ほれ、この通り弁当は持ってきた。 はたかぜ うへ、滅茶苦茶豪華じゃん。重箱って…。 月也 羨ましいか?愛妻弁当だ。 まったくあいつはいいって言ってるのに張り切っちゃってなぁ…。 はたかぜ その惚気長く続きます? 月也 …まったくノリの悪い奴だな。 はたかぜ いや、さっさと飯食っちゃいたいもんで。 月也 ふむ…?なんだ、随分可愛らしい弁当だな。 自作か? はたかぜ いんえ。マスターのお手製だそうです。 月也 紗那の? …ガッハッハ!そうか、紗那がか!ハッハッハッハ!! はたかぜ そこまで大爆笑するとこか? 月也 いやなに、なんだ、紗那もなかなか女の子してるじゃないか。 ハハハ、何も心配する事はなかったな! はたかぜ 心配? 月也 ん、あぁ、親心みたいなものだ。 ほれ、紗那はいつもあんな感じで堅苦しいだろう? はたかぜ んー、まぁとっつき辛い感じはありますかね。 月也 だからもう、自分が女である事忘れてるんじゃないかとな。 いやー、一安心一安心。 はたかぜ でも親心ってのは? 月也 ん、あぁ。お前は知らないか。 …そうだな、少しくらい話してやろうか。 はたかぜ マスターの恥ずかしい過去? 月也 どちらかと言えば悲惨な過去だ。 はたかぜ …聞いていいんすか? 月也 ま、かじり位だ。 あの子はな、「忌み子」だったんだ。 はたかぜ 「忌み子」? 月也 家族に捨てられ、街の人に見放され、 路地裏に塵屑の様に転がっていた。 それを自分が拾い、育ててきた。 はたかぜ マスターにそんな過去が…。 月也 あの子は誰も恨んでなかった。 だが、誰かを信じようともしなかった。自分自身すらな。 はたかぜ まぁ…そんな事があれば当然…。 月也 だから一つ、友達をプレゼントしてやった。 あの子が今も使い続けてる、あの剣だ。 自分が学んだ技術は決して自分を裏切らない。 あの子は剣術を教えるようになってから変わった。 はたかぜ 変わった? 月也 あぁ、自分の剣を、自分の力を信じるようになった。 そしていつしか、他人を信頼する心も取り戻した。 そして気付いた時には、誰もが認める立派な戦士となった。 もう誰も「忌み子」だと言って罵る者は居なくなっていた。 はたかぜ その、「忌み子」ってのがいまいちわからないんだが…。 月也 忌むべき存在。人成らざる力。あっては成らない者。 …あまりこれは自分が言及するべき事ではないな。 あの子が望んだとき、紗那自身の口から聞けばよい。 はたかぜ はぁ…なんか大変だったんだなマスター。 月也 ま、だからこそお前を拾ったのかもしれんな。 昔の自分と照らし合わせたんじゃないか? はたかぜ どうかな…オレはマスターほど悲惨じゃない。 独りよがりで何もかもに反発して…行き着いた先がアレだっただけだ。 月也 ふん、そういう辛気臭い顔をするな。 今までの経緯がどうあれ、今は此処に居るじゃないか。 ならば、現状をより良い方向に持って行けばいいだけの話だろう。 はたかぜ 良い方向…ねぇ。 月也 紗那はあれで甘い所がある。 はたかぜ …すいません、今の所甘い部分が見当たりません。 月也 そうか?日中の鍛錬にしろ、随分と手加減をしてるようだが。 はたかぜ え、あれで手加減してるの!? 月也 当然だ。紗那が本気になったらお前なんぞ一日と持たんぞ。 はたかぜ うわぁ…あれ以上があるのか。 月也 ま、年寄りの長話はこれくらいにしておこう。 あまり口煩いと嫌われてしまいそうだ。 はたかぜ ははは、なかなか面白い話だったっスよ。 月也 お世辞ならもう少し上手く言え。 それでは私は行くとしよう。 はたかぜ 仕事? 月也 これでも団長だからな、色々とあるのだよ。 はたかぜ お疲れさまっす。 月也 あぁ、それではな。 月也上手はけ はたかぜ …そーいや重箱空になってたけど… いつの間に食ったんだ!? 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------------------------- 第二章【オッキ〜・朱鷺弥・兵士A】 ------------------------------------------------------------------------------------- オッキ〜板付き 道化 【溶明】 オッキ〜 教皇主体の国作りなど今の時代馬鹿げている。 何が神の代弁者だ。神の名を振りかざした横暴ではないか。 民の声を聞き、それを国政に反映させてこそではないのか? なぁ、そうは思わないか、朱鷺弥? 朱鷺弥舞台入り(クロキンとかで 朱鷺弥 さぁな。国のどうこうなんざオレには興味ないね。 オッキ〜 お前のような戦闘員風情にはいささか難しすぎたか。 朱鷺弥 馬鹿にすんな、話くらいわかる。 だがな、そーいうの興味ねーんだわ。 オッキ〜 つまらん奴だ…国一つが丸々自分達の物になるかもしれんのに。 朱鷺弥 そんなもんはいらねぇ。 オレはさー、ただ殺りたいだけなんだよ。 この組織に入ってる理由はよ。 オッキ〜 ほう? 朱鷺弥 オレを「忌み子」として蔑み、罵り、見下した街の奴らをさ この手で、切り裂いて、蹂躙して、ミンチにしてやりたいのさ。 想像してみろよ? 散々蔑ろにしてた相手に嬲られる姿をよ! オッキ〜 生憎私はサディストではないのでな…。 それはわかりかねる。 朱鷺弥 ちぇ、つれねぇなぁ。 最高じゃねぇか、泣き喚いて顔ぐちゃぐちゃにして オレに命乞いするんだぜ。 想像しただけでご飯三杯はイケちゃうね!! オッキ〜 まったく、君の性癖は理解しかねるね。 で、だ。わざわざ理由も無しに君を呼んだりしないわけだが。 朱鷺弥 あぁ?わーってるよんなこと。 どーせ任務だろ?誰だ、今度は誰を殺ってくればいいんだ? オッキ〜 そう急くな。 今回は大物中の大物だ。失敗は許されないぞ? 朱鷺弥 失敗なんかしねーってーの。 仮に失敗があるとすりゃオレが死んだ時くらいだよ。 オッキ〜 ま、それはそれで事後処理が楽で助かるが。 朱鷺弥 で、誰を殺ってくりゃいいんだよ? 焦らさないさっさと教えろよ!! オッキ〜 …教皇だ。 朱鷺弥 教皇?教皇ってーとあれか! あの城だかなんだかわかんねぇでけぇ建物の! あのよくわからねぇガキか! オッキ〜 そうだ、顔ぐらいは知っているだろう? 朱鷺弥 有名人じゃねぇか、なんたってこの国の顔だからな! そんな奴を殺れるのかよ! やっべー、コーフンしてきた…。 オッキ〜 落ちつけ。何もお前一人で行動させるわけではない。 朱鷺弥 んだよ、また足手まといつけるのかよ。 萎えるわー、それすっげー萎える。 オッキ〜 そう言うな。あそこの守備はなかなか固い。 万が一、という事も在り得るからな。いわば保険だ。 朱鷺弥 んなもんオレが全部殺ってやるってのによぉ。 オッキ〜 お前の腕を信じていないわけではない。 教皇をお前が討ちたいのならそれで構わん。 他の者は陽動に当たってもらうとしよう。 朱鷺弥 あいよ、わーったよ。あんたと喧嘩するつもりもねぇしな。 オッキ〜 なれば以上だ。開始時間は1週間後、25時だ。忘れるな。 朱鷺弥 …なんだよ、そんな間ぁあんのかよ? 折角のやる気が消えちまうぞ? オッキ〜 それなりの人数を揃える。多少なり時間が必要なのだ。 その間お前は武器の手入れでもしていろ。 朱鷺弥 へーへー、わかりましたよ。 オッキ〜 あぁそうだ、あと少し見て欲しい物がある。 新しく戦闘員に配備しようかと思っている武器があるんだ。 朱鷺弥 オレに品定めしろってか? オッキ〜 そういうことだ。こっちだ。 朱鷺弥 人使いが荒いこって。 オッキ〜、朱鷺弥上手はけ 兵士A下手入り 兵士A 大変だ…急いで教皇様…いや 聖騎士団の方に知らせないと…。 朱鷺弥舞台入り(やっぱりクロキンとかで 朱鷺弥 まーったく、どっから入って来たんだよ。 兵士A しまっ… 朱鷺弥 まぁいいか、退屈してたとこだし。 精々良い声で啼いてくれよ?その方が楽しいからよ。 兵士A ひ、や…、やめ……!! 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------------------------- 第三章【はたかぜ・紗那・月也・兵士B】 ------------------------------------------------------------------------------------- はたかぜ・紗那板つき 道化 【溶明】 紗那MB、はたかぜ吹っ飛ぶ はたかぜ っつぁ! 紗那 大分相手の攻撃を受け流せるようになってきたがまだまだだな。 随所に隙を作っている。 はたかぜ いてて…マスターがそこ厭らしく狙ってきてるんじゃねぇか…。 紗那 真剣勝負は読み合いだぞ? 隙を作ったら狙われる、それだけだ。 はたかぜ はぁ、めんどくせぇなぁ。 紗那 そうぼやくな。 基礎は殆ど出来てきている。 あとは応用、そして状況判断だな。 はたかぜ 応用なぁ…あいてて。 紗那 む、少し力加減を誤ったか? 大丈夫か? はたかぜ ん、まぁツバでもつけときゃ治るだろ。 気にしないでOKだ。 紗那 そうか、だがやせ我慢ならやめておけ。 いざという時に力を出せなくては困るからな。 はたかぜ 本当に大丈夫だって。 紗那 そうか、なら良いが。 月也上手入り 月也 おー、今日もやってるな。 はたかぜ よー、おっさん。 月也 おっさん言うな。 紗那 団長、どうかしましたか? 月也 いや、ただの様子見だ。 どうだぁ、調子はー? はたかぜ この状態で元気満々に見えるなら眼科を勧める。 紗那 と軽口を叩ける程余裕だそうです。 月也 お前もそんな冗談を言えるようになったか。 紗那 はい? 月也 いや、気にするな。 ま、あんま苛めすぎるなよ。 紗那 加減はしていますので。 はたかぜ さっき自分で加減を誤ったとか言ってなかった…? 紗那 あ、あれは君の身を案じて…! 月也 ハッハッハ、随分仲が良いようだな。 邪魔者は消えるか。 紗那 いえ、あの、団長を邪魔だなんて…! 月也 冗談だ。これから少し会議があってな。 まったく、面倒くさいもんだ。 はたかぜ 若いのにそろそろ団長権限渡したらいいんじゃねぇの? んで、おっさんは引退すると。 月也 そうしたいんだがなぁ、なぁ紗那? 紗那 謹んでお断りします。 月也 という具合なんだ。 はたかぜ マスター、団長なりたくないん? 紗那 私は…人の上に立ち人を統べるべき者ではない…。 はたかぜ …? 月也 ま、そーいうわけだからな。 紗那もその気になってくれんからこの歳になった今も この騎士団の団長をやってるわけだ。 紗那 それならいっそ、コレを推薦しましょうか。 はたかぜ オレ!?無理無理無理無理!! って、言うかオレ、コレ扱いかよ! 月也 さすがにまだお前さんには荷が重すぎるだろう。 それくらいわかってるわ。 はたかぜ はぁ〜…。 月也 ま、もっと心身共に成長したら…わからんかもな。 はたかぜ あんま期待しないでくれよ。 紗那 いや、過剰な期待を持つつもりはない。 私も団長もな。君の取り組みを見た上での発言だ。 月也 あぁ、なんだかんだ言いつつ訓練を続けている。 そして何より飲み込みが早い。案外面白い事になるかもしれんぞ? はたかぜ そこはほら、師がいいからじゃね? 紗那 おだてたって何も出ないぞ? はたかぜ 本心さ。 月也 ま、あまり無茶はせんようにな。 紗那 はい。 月也 それじゃ… 兵士B上手入り 兵士B 団長!緊急連絡です! 月也 どうした? 兵士B 自分の結婚式の日取りが決まりました…じゃなくて! 先日、「終ノ円舞曲」アジトへと送った者からの 定時連絡が滞っていまして… 月也 …消された、か。 兵士B それはわかりませんが… 最後の連絡で、奴らが教皇襲撃を狙っていると…。 月也 …わかった、詳しい話を聞こう。 すまんな、二人とも。自分はこれで失礼する。 紗那 はっ。 月也、兵士B上手はけ はたかぜ …なんかヤバそうじゃね? 紗那 だが、私達ができるのは待つ事くらいだ。 上からの命令が来次第動く事になるだろう。 はたかぜ ふむ。…マスター、「終ノ円舞曲」って… 紗那 君も耳に挟んだ事くらいはあるだろう。 このアルナベルツ教国の闇。過激な武力行使を得意とする組織だ。 詳しい人員などはわかってはいないが…。 狙いは国家転覆という事はわかっている。 はたかぜ 簡単に言えばテロリストか。 紗那 そう、だな。 奴らが教皇襲撃するとなると生半可な手は使って来ないだろう。 はたかぜ まぁ、そうだろうな。 紗那 恐らく騎士団総出での守備になる。勿論君もな。 はたかぜ え、オレも!? 紗那 当然だ。…というわけで。 それに備えて今から猛特訓だな。 はたかぜ …マジで? 紗那 大マジだ。付け焼刃で勝てる相手ではないのだ。 上級戦闘員相手となると、今の君では殺されに行くようなものだ。 さ、剣を取りたまえ。死なない程度に本気で行くぞ。 はたかぜ ……………死ぬかも。 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------------------------- 第四章【紗那・はたかぜ・月也・教皇・兵士B】 ------------------------------------------------------------------------------------- 紗那・はたかぜ板付き 道化 【溶明】 紗那 忘れ物は無いか? はたかぜ 子供じゃあるまいし心配ねぇよ。 紗那 ならいいが。 はたかぜ ところでさ。 紗那 どうかしたか? はたかぜ いや…マスターは兎も角… なんでオレまで教皇の礼拝室前の警護なんだ? 紗那 …は? はたかぜ いや、…は?じゃなくて。 紗那 当然だろう?君は私の弟子だろう。 とても残念な事だが君のお守りは私がしなければならない。 そういう事だ。 はたかぜ なーるほど…言い方に釈然としないけど。 紗那 軽口を叩くのは良いが敵はもういつ来てもいい時間だ。 油断をして後ろからバッサリ…などは勘弁してくれたまえ。 はたかぜ おっさん達が周り囲んでるから そう簡単には入ってこれないと思うんだがなぁ。 紗那 しかし確実では無い。注意するに越した事は無いだろ。 はたかぜ さいですか。 教皇下手入り 教皇 わざわざすまぬな、妾の為にこの様な警備をさせてしまい。 紗那 教皇様?今出てきては危険です。 教皇 良い。お主等を信用しておる。 しかし、わざわざ妾を襲うとはなかなか豪胆な奴等よのう。 紗那 あの、御自身の置かれている状況を把握してらっしゃいますか? 教皇 それくらい判っておる。 妾を殺しに来るのじゃろう? 紗那 はい、ですからお部屋にお戻り下さい。 いつ敵が侵入するとも限りませんので。 教皇 わかったわかった、今戻るからそう急かすでない。 そうじゃ紗那よ。 紗那 何か? 教皇 今こういう事を言うのも変かもしれんが… お主はもう誰から見ても立派な騎士じゃ。 子供たちの憧れの対象ですらある。 じゃからな、生まれの不幸を忘れろとは言わんが、 もっと胸を張ったらどうじゃ? もう誰も、お主を「忌み子」だと嫌悪する者は居らん。 紗那 …はい。有難う御座います。 教皇 では、妾は部屋へと戻る。しっかり護ってくれたまえ。 信用しておるぞ、フレイヤ聖騎士団が副長とその弟子よ。 紗那 はっ。 はたかぜ あ、はいっ。 教皇下手はけ はたかぜ なんつーか…なんだろ? 紗那 どうした? はたかぜ いや、教皇初めて生で見たけど、イメージと大分ズレが…。 紗那 そうか?あの方はいつもあのような雰囲気だ。 はたかぜ ふーん……あのさ、マスター、ちょっと聞いてもいい? 紗那 私が答えられる事ならな。 はたかぜ 「忌み子」ってさ、何なんだ? 紗那!エモ はたかぜ あ、いや、言いたくなきゃ言わなくてもいいんだが。 紗那 …簡単に言えば…化け物だろうな。 はたかぜ え? 紗那 形こそ常人と同じだが、潜在能力は遥かに上回る。 また、魔族が使うような特殊技能、超自然的な力を操る者も居る。 人の器に、人ならざる力を持った者。 畏怖の念からその者達は「忌み子」と言われ、虐げられてきた。 はたかぜ …マスターもそうだったのか? 紗那 現在進行形だ。今でこそ力の加減を知ったものの… 昔は酷かったよ。気が付いたら素手で人を殺しかけていた事もある。 小さな子供が大の大人をだ。なかなかにシュールな状況だな。 そんな私が今では騎士団の副長だ…因果なものだ。 はたかぜ …よくわかんねぇけどさ… マスターはマスターだろ? 紗那 何? はたかぜ 生まれの不幸だとか過去の嫌な思い出とかもあるだろうけど 今のマスターは騎士団の副長で、皆から慕われてて、 オレの師匠だろ?それでいいんじゃねぇの? 紗那 簡単に言う。 はたかぜ マスターが変に真面目すぎるんだよ。 もっと肩の力抜いて良いと思うぜ? 紗那 そういうものなのだろうか…? はたかぜ そーいうもんだろ。 月也上手入り 月也 紗那! 紗那 団長? 月也 奴等小賢しく頭使ってきやがった! 周囲の多方向から陽動をかけられている。 少なからず中に入られた…自分は教皇の部屋へ行く。 この通路の守備を任せる、頼んだぞ二人とも。 紗那 了解しました。 はたかぜ ま、死なない程度に頑張るか。 月也 こんな時に気の抜けるような事を言うな…。 兎に角…頼んだ! 月也下手はけ 紗那 さて…どうやら本番のようだ。 はたかぜ らしいね。 なぁマスター、一つ教えてくれ。 紗那 なんだ、こんな時に? はたかぜ もし、その力をフルに使ったらマスターはどうなるんだ? 紗那 どうだろうな…。 もしかしたら器が割れてしまうかもしれん。 はたかぜ それって… 兵士B (客席)なんだおま…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 紗那 来たか! はたかぜ うっわ、マジで? 紗那 我々も往くぞ。 はたかぜ …マスター、あんま無茶はしないでくれな。 紗那 無茶しないで勝てる相手だといいのだがな。 紗那・はたかぜ上手はけ 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------------------------- 第五章【紗那・はたかぜ・朱鷺弥】 ------------------------------------------------------------------------------------- 朱鷺弥板付き 道化 【溶明】 朱鷺弥 ったく、なんだぁこの腑抜けた警備はぁ? やる気あんのかよ? 紗那・はたかぜ下手入り はたかぜ 居たっ! 朱鷺弥 お、追加オーダーを頼んだ覚えはねぇが? なんだ、ルームサービスか?ひゃひゃひゃ! 紗那 …はたかぜ、下がってろ。 はたかぜ え、でも…? 紗那 彼奴も…「忌み子」だ。 朱鷺弥 おーおー、ビンビン伝わってくるよぉ。 べっぴんさん、あんたもオレの同族かよ。 なぁんだ、えらい隠し玉あったんじゃねぇかよ。 紗那 お前のような賊に同族扱いを受けるのは不服だな。 この場で斬り捨てられるか、尻尾を巻いて逃げるか選びたまえ。 朱鷺弥 ハハハハハハ!こいつぁ面白ぇジョークだ! こんな美味そうな獲物目の前にして逃げるなんてとんでもねぇ! 勿論斬られる事もねぇ!! 紗那 ほう、その心は? 朱鷺弥 オレサマ オマエラ ミナゴロシ。 紗那 笑えない冗談だ。 そういうのは好きではないな。 朱鷺弥 ありゃー、つれねぇなぁ。 しかし、今日の目的は教皇様だしなぁ。 あーんま時間食うとまたオッキ〜の野郎の説教食らうかんなぁ。 紗那 早々に立ち去ってくれると有難いのだがな。 朱鷺弥 そーいうわけにもいかないもんでぇ。 つーわけで… 殺らせてもらっちゃうけど、いいよなぁ!? 紗那 謹んでお断りだ。 殺陣 朱鷺弥 やるじゃんやるじゃんやるじゃん!! そうでなくっちゃ!わざわざ出向いた甲斐が無いってもんだ! おもしれぇ、あんたおもしれぇよ!! はたかぜ マスター! 紗那 大丈夫だ。…まだな。 はたかぜ まだ…? 朱鷺弥 面白ぇけどそろそろ締めなきゃなぁ。 本気、出させてもらうわ、わりぃね? 紗那 ふ…ならばこちらも手を抜く必要は無さそうだな。 全力でお相手しよう。 朱鷺弥 ヒャッハハハハハ!!最高だよ! 楽しませてくれよ!?簡単にくたばったら萎えるからよぉ! 殺陣 紗那 捕まえたぞ…! 紗那GX 朱鷺弥 がぁぁ!喰らっちまったぁ!! クソッタレ…今のでタネ切れか、あぁっ!? 紗那 もう、これ以上は必要あるまい。 朱鷺弥 あ、何言って… 朱鷺弥!エモ 朱鷺弥 な、なんだよコレ…?なんでオレが崩れて…? 紗那 己が炎に身を焦がし、燃え尽きろ。 朱鷺弥 なんだよ、やだよ、まだ死にたくねぇよ…! まだだ、まだ殺し足りねぇよ……ま…だ……!! 朱鷺弥蝶飛び 紗那 ふぅ…。 はたかぜ すげぇ…、あんなのに勝っちまった…。 マスター? 紗那座る はたかぜ マスター!?大丈夫かよ!! 紗那 すまないな…君が折角忠告してくれたのにな…。 少しばかり無茶をしてしまったようだ…。 はたかぜ 無茶って…まさか!? 紗那 彼奴は自らの力に飲まれ滅んだ…。 私も例外では無いようだ。 はたかぜ そんな、嘘だろ!? 紗那 自分の事だ、わからいでか。 限界を越えた力を出してしまったのでな。 人としての器が耐え切れなかったんだろう…。 はたかぜ そんな…それじゃあ…。 紗那 哀しそうな顔をするな…この力のお陰で…君を護れた。 はたかぜ え…。 紗那 私がもし彼奴の剣に倒れていたら…次は君の番だったろう。 だから…君を護る事が出来たから…悪い取引ではないよ。 この身が燃え尽きたとしても…な。 はたかぜ 何言ってんだよ?なんでオレなんかの為にそこまで…! 紗那 君は…私の唯一の弟子だから、な。当然だろう。 …もう、時間は残り少ないようだな…。 この剣を…君に。 紗那2HS落とす はたかぜ それはマスターがおっさんから貰った…。 紗那 剣を取りたまえ…はたかぜ。 はたかぜ でも、でも…! 紗那 いいから!! はたかぜ …わかったよ。 はたかぜ2HS拾う 紗那 其の剣に願おう、君の前途が輝かしいものである事を…。 其の剣に託そう、君の為の希望ある未来を切り開く事を…。 はたかぜ ちょ、何言って…。 紗那 私は…この肉体はもうじき滅びる…。 だがな、覚えていてくれ。 君がその剣を持っている限り…君が覚えていてくれる限り… 私は君の中で生き続ける…。 其の剣が在る限り…私達はずっと一緒だ。 はたかぜ マスター…。 紗那 泣くな…男だろう? なんで私が笑っているのに…君が泣かなければいけないんだ…。 はたかぜ ………わかった。 オレはこの剣に誓う!絶対にマスターの事を忘れない! マスターの教えを、貴女の生き様を、紗那と言う素晴らしい騎士が居た事を! 絶対に…絶対に何時までも忘れはしない!! 紗那 ふふ…よくまぁ…気恥ずかしい科白を…。 だが…なんだろうな…?とても安心したよ…。 はたかぜ …マスター…。 紗那 どうやら私の舞台は閉幕のようだ…。 さよならだ…はたかぜ。 紗那毒瓶 はたかぜ !! マスター!?マスター!! 紗那ログアウト はたかぜ …くっ… っそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 道化 【暗転】 主力を失った「終ノ円舞曲」の部隊は撤退をした。 教皇は大事を免れ、聖騎士団は国を上げて英雄と奉り上げられた。 そして、紗那の死を国民は大いに悲しみ、彼女の為に国葬が催された。 しかし…彼女の意志は… 確固たるものとして一人の青年の中で生き続けていた。 ………それから月日は流れ……… ------------------------------------------------------------------------------------- エピローグ【はたかぜ・春風・紗那】 ------------------------------------------------------------------------------------- はたかぜ板付き 道化 【溶明】 はたかぜ えぇと…研ぎ石研ぎ石…どこだっけかなぁ。 確か倉庫に置いといたはずなんだが…っと。 あれぇー? 春風下手入り 春風 あれ、団長? はたかぜ ん、あぁ、春風か。どした? 春風 いえ、団長こそ…。 はたかぜ あぁ、ちょっとこいつの手入れしようと思ってな。 研ぎ石探してるんだが…。 春風 随分年季の入った剣ですね? はたかぜ まぁな。なんたってこいつは大事な人の形見だからな。 春風 …そうだったんですか? はたかぜ あぁ、あの人からの最後のプレゼントだ。 あれから…もう何年になっかなぁ…。 春風 とても…大事なんですね。 はたかぜ あぁ。こいつは半身みたいなもんだからな。 大事どころの話じゃねぇな。 この剣があるからこそ、今のオレがあるんだな、きっと。 春風 あ、あのすいません…何も知らないのにずけずけ聞いちゃって。 はたかぜ 別に謝る必要はないさ。 知られたくない過去ってわけでもない。 春風 でも…。 はたかぜ あぁ、もう、気負うなっての。 しゃーねぇ、ちょっと研ぎ石探すの手伝って気分転換でもしろ。 春風 あ、はい…。 はたかぜ しかし…ホントどこやったっけかなぁ? 春風 あの、色々すいません。 はたかぜ ん 春風 自分の為に変に気を使って頂いて…。 はたかぜ 何、気にすんな。部下のフォローも団長の役目〜っとね。 春風 それから…非常に言い難いんですが…。 はたかぜ なんだ、まだなんかあるのか? 春風 研ぎ石…さっき修練所で別の方が使っていたかと…。 はたかぜ …なぁ春風? 春風 は、はい! はたかぜ そういう事は真っ先に言えってぇの!! はたかぜMB 春風 すいませんごめんなさい申し訳ありません〜!! 春風下手はけ はたかぜ まったく…。 ま、こんな感じでなんとかやってるよ。 見えてるかい、マスター…。 紗那 (客席)―部下で遊んではいけないぞ、君。― はたかぜ マスター!? …………な、わけないよな? まぁ、案外近くに居るかもしれないけどな。 とりあえずは見ててくれよ、頑張るからさ。 さてと…研ぎ石の在り処はわかった事だし…行くか。 はたかぜ下手はけ 道化 【終劇】