【登場人物】 黄泉子♀・主人公。 カツィア♀・ジュノーで黄泉子が出会った少女。信仰心が厚い 薙奈♀・カツィアの妹。病弱な体。 戒莉♂・教会の司祭。 フォン♂・教会の僧侶。戒莉の右腕 華澄 ・現・王室近衛騎士団団長 藤丸♀・黄泉子の姉。過去に名誉騎士の称号を得たが現在は隠居 忍♂・ベススマ参照(ぇ いつの間にか藤丸と夫婦の関係に。でも放浪癖は直ってない ------------------------------------------------------------------ プロローグ【黄泉子・アカツィーア】 ------------------------------------------------------------------ 黄泉子板付き 道化 【溶明】 黄泉子 ふぃーやっと着いたー。徒歩だとすごい大変だったなぁ。ここがジュノー…。 知識を探求する人達が集うと言われるだけあるなぁ。 見たこと無い物が沢山。ちょっとワクワクしてきちゃった。 アカツィーア上手入り カツィア あら、見かけない方ですわね。旅人さん? 黄泉子 あ、はい。ここの住人の方ですか? カツィア えぇ。ようこそ、知識の街ジュノーへ。 旅人さんも他の方のように何か知識を求めてここへ? 黄泉子 いえ、私はただ単に観光みたいなものです。 自分の足でまだ見たことのない景色を探してるんです。 カツィア 珍しい方ですわね。ではもう周る所等はお決まりで? 黄泉子 いえ、街の場所と名前だけを頼りに来たものでまだ…。 カツィア 私で宜しければご案内致しましょうか? 黄泉子 え、でも、ご迷惑じゃ…。 カツィア ここで出会ったのも神のお導きですわ。 あ、でも案内より先に今日のお宿ですわね。 今この街に到着したばかりではお泊まり先もまだでしょう? 黄泉子 お恥ずかしながらその通りで…(*ノノ) カツィア 少し狭いですが私の家で良ければお泊めしますわ。 もちろん、それなりのお持て成しは致しますわ。 黄泉子 それはありがたいんですが、いいんですか? カツィア 構いませんわ。これも神のお導きでしょうから…。 黄泉子 ほへ? カツィア なんでもありませんわ。 そうしましたら…家までご案内致しますわ。 もうそろそろ日が沈んでしまいます。 黄泉子 そうですね。それじゃあお願いします。 カツィア はい。 …急ぎましょう。夜は…悪魔が支配する時間ですから…。 黄泉子 え? カツィア なんでもありませんわ。あ、自己紹介がまだでしたわね。 私はアカツィーアと申します。この街の教会で修道女をしています。 こんな格好ですがね。 黄泉子 私は黄泉子と言います。 カツィア よろしくね、黄泉子さん。 黄泉子 よろしくお願いします、シスターアカツィーア。 カツィア ふふ、カツィアでいいですわ。 黄泉子 それじゃ、カツィアさん、で。 カツィア はい。それでは行きましょうか。 黄泉子 はい。 カツィア こちらですわ。 カツィア、黄泉子上手はけ 道化 【暗転】 此処は全ての知識が集う街、ジュノー。 其処に一人の来訪者が現れました。 年は十代後半でしょうか。髪は襟首で小奇麗に揃えられ、 その顔にはまだ少女の面影を残しておりました。 そんな彼女がジュノーに来た事で一つの物語の歯車は動き始めます。 【黄泉子の足跡 〜知識は神を愚弄す〜】 開演――― ------------------------------------------------------------------ 第一章【黄泉子・アカツィーア・薙奈】 ------------------------------------------------------------------ アカツィーア板付き、黄泉子舞台下手ギリで待機 道化 【溶明】 【滞在一日目】 カツィア さ、ここですわ。 黄泉子舞台入り 黄泉子 おじゃましまーす。 カツィア 何もありませんけど、くつろいでください。 黄泉子 それじゃあお言葉に甘えて…。 薙奈上手入り 薙奈 おかえりなさいお姉ちゃ…あれ? お客様ですか? 黄泉子 あ、お邪魔してます。 薙奈 いらっしゃいませー。 カツィア 薙奈、だめじゃない。 寝てないと治るものも治らないでしょう? 薙奈 …ごめんなさい、お姉ちゃん。 カツィア わかればいいのよ。さ、部屋に戻って。 薙奈 はぁい。 …あ、お客様はゆっくりしてってくださいね。 黄泉子 えぇ、ありがとう。 薙奈 えへへ、それじゃあおやすみなさい。 薙奈上手はけ カツィア はぁ…。 黄泉子 妹さん…ですか? カツィア えぇ…。 黄泉子 あの…何かご病気でも? カツィア!エモ 黄泉子 あ、すいません! 成り行きで泊めてもらうだけなのに変なこと聞いちゃって! カツィア いえ、いいですわ…。 あの子―薙奈は生まれた頃から体が弱くて、 いつもベッドの上なのよ。 色々治療はしてみましたけど…未だに治りはしませんわ。 黄泉子 …そう、なんですか。 カツィア ごめんなさいね、空気を重くしてしまって。 …?大丈夫?貴女、すごく辛そうよ!? 黄泉子 あ、大丈夫…です。 ただ…… カツィア ? 黄泉子 私は今でこそ、こうやって元気に自分の足で色々旅をしてますが 小さな頃は病気のせいでずっと病室に居たので…。 私も…治るかどうかわからない病気と言われていたので… カツィア まぁ…。 黄泉子 あの、その、なんて言っていいかわからないんですが! えぇと、元気を出してください、きっといつか良くなりますから! カツィア …ふふ、不思議な人ね。ありがとう、気分が軽くなりましたわ。 そうね…きっと神のご加護があるわよね。 …この話はとりあえずお仕舞い、ね? 黄泉子 あ、は、はい。 カツィア そうしましたら夕食に致しましょう。 今準備致しますわ。 黄泉子 私も何かお手伝いしますよ。 ただ泊めて頂くのも悪いですし…。 カツィア ふふふ、いいですわよ。 お客様の手を煩わせたと知ったら薙奈に叱られてしまいますわ。 黄泉子 うぅ…そう言われても申し訳ないですよ…。 カツィア そうですわねぇ、そうしますと…あぁ。 食器の準備をお願いできますかしら? 黄泉子 お任せあれ! カツィア ふふ、本当、不思議な人。 黄泉子 え? カツィア コロコロ表情が豊かで素敵な人ね。 貴女みたいな人、久しぶりに見ましたわ。 黄泉子 な、なんか照れますね(*ノノ) カツィア 良い事よ、そうやって表現できるのは。 ここに来る人はみんな…何処かに表情を置いてきた人ばかりなんですもの。 黄泉子 ふぇ? カツィア なんでもありませんわ。 さ、夕食の準備を始めちゃいましょう。 薙奈もおなか空いてるでしょうしね。 黄泉子 そうですね。 (…なんか色々事情があるのかな…?) カツィア あ、そっちにある大皿を真ん中にお願いしますわ。 黄泉子 あ、はーい。 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------ 第二章【黄泉子・アカツィーア・薙奈・フォン】 ------------------------------------------------------------------  黄泉子・薙奈・アカツィーア板付き 道化 【溶明】 【滞在二日目】 カツィア ごめんなさいね、案内するとか言っておきながら…。 黄泉子 いえ、お勤めは仕方ありませんよ。 私は後で私なりに街を周ってみます。 カツィア そうですか。物騒な事は無いと思いますが気をつけて。 貴女に神のご加護が有りますように。 それでは、行ってまいりますわ。 黄泉子 はい。 薙奈 お姉ちゃんいってらっしゃーい。 カツィア いい子にしてるのよ、薙奈? 薙奈 うんー。 カツィア それじゃあね。 カツィア下手はけ 黄泉子 薙奈ちゃんはお姉さんが大好きなんだね? 薙奈 うん! お姉ちゃんはね、美人だし料理上手だしね それにね、それにね! お姉ちゃん、私にすっごい優しいの! 黄泉子 うん、お姉さんも薙奈ちゃんが大好きなんだね。 昨日から見ててよくわかるよ。 薙奈 え、っと、お姉さんにもごきょーだいっているの? 黄泉子 うん、すごい素敵なお姉ちゃんがいるよ。 薙奈 どんな人、どんな人ー? 黄泉子 うんと、そうだなぁ。 ちょっとおっちょこちょいだけど、すごく優しくてね。 薙奈 それで、それで? 黄泉子 それでね、すごい強いの。 私が子供の頃なんか悪い奴らをバーン!とやっつけちゃったの。 薙奈 すごーい! 黄泉子 それにね、お姉ちゃんのお陰で私も強くなれたの。 うぅん、お姉ちゃんだけじゃなくて…お姉ちゃん達、かな。 薙奈 ? 黄泉子 ふふ、思い出したらおかしくなっちゃった。 薙奈 何か面白いことでもあったの? 黄泉子 あのね、私も小さな頃、病気してたの。 薙奈 薙奈と同じだー。 黄泉子 うん。だけど今はこんなに元気なんだよ。 なんでだかわかる? 薙奈 うーん? 黄泉子 お姉ちゃん達が私に元気を分けてくれたの。 だから今の私はすっごい元気なんだよ。 薙奈 元気って分けれるの? 黄泉子 うん、できるんだよ。 薙奈 どうやるのー? 黄泉子 うーん、説明するのは難しいかなぁ? そうだなぁ…一緒にその日その日を楽しむことかな? 薙奈 そのひそのひをたのしむ? 黄泉子 薙奈ちゃんにはちょっと難しかったね。 ごめんね、お姉ちゃんあまり上手に説明できないや。 薙奈 んーん、気にしないでー。 黄泉子 うん、ありがとうね。 薙奈 お姉さんって旅人なんだよねー? 黄泉子 一応そういうことになるかな? 薙奈 それじゃーね、今まで行って来たとこのお話聞きたいな! 黄泉子 いいけど…面白くないかもしれないよ? 薙奈 うぅん、薙奈はね、ずっとこのおうちの中にいるから 知らない場所いっぱいなの。 だからどんなお話でも面白いよ! 黄泉子 そっか…。 それじゃあどんなお話がいいかな…。 フォン下手入り フォン こんにちは。アカツィーアさんはいらっしゃるかね? 黄泉子 あ、カツィアさんなら教会へ…。 薙奈 あ、教会のおじさんだー。 フォン おじさんじゃない、お兄さんだ。 っと…行き違いだったか…。 時に君は誰だね?見ない顔だが…。 黄泉子 あ、私は昨日こちらの街に来た、その…旅人です。 フォン そうですか。あの山道を来るとはさぞ辛かったでしょう。 黄泉子 楽しみを見つけて歩けば疲れも苦では無いですよ。 それよりもカツィアさんに用事では? フォン あぁ、そうなんだが…もう教会に行ったのか。 私も教会に戻るとしよう。 それでは、失礼した。 ―この者達に神の加護があらんことを。 フォン下手はけ 黄泉子 忙しい人だねー。あれも教会の人? 薙奈 うん。えっとねー、教会でえらそうにしてる人でねー。 黄泉子 えらそうに…。 薙奈 名前が、ふぉん?って言う人だよー。 黄泉子 何を急いでたんだろう?お姉さんに急用だったのかな? 薙奈 あのおじさん、たまに来るんだけど。 いっつもお姉ちゃん連れてっちゃうから嫌いー。 黄泉子 そっか。薙奈ちゃんはお姉さんにずっと居て欲しい? 薙奈 うんと…居て欲しいけど…。 でも、お姉ちゃんにもお仕事あるから…無理はしないで欲しいな。 黄泉子 薙奈ちゃんは優しいね。 薙奈 えへへー。 黄泉子 そうだ、あの人来て途切れちゃったけど 今まで行って来たとこのお話だったね。 薙奈 うん!聞かせて聞かせて! 黄泉子 それじゃあ私がここに来る一つ前の街、 アルデバランって街に行った時のお話でもしようか。 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------ 第三章【アカツィーア・戒莉・フォン】 ------------------------------------------------------------------ アカツィーア板付き 道化 【溶明】 【ジュノー郊外・教会】 カツィア 聖餅とぶどう酒がそろそろ補充した方が良さそうね…。 あぁ、あとミサの準備もしないと…。 戒莉下手入り 戒莉 シスターアカツィーア。 女性がみだりに走り回るのは感心しませんな。 カツィア あっ、司祭様!失礼しました…。 戒莉 ははは、そう畏まらないでくれ。 神の御前では皆平等なのだからね。 カツィア そうは仰いましても…やはり司祭様ともなると。 戒莉 私はそういった役職にあまり囚われたくないのだよ。 皆、等しく同じ人間なのだからね。 カツィア はぁ…。 あ、それでは私はまだやらなければならないことがありますので…。 戒莉 待ちたまえ。君を呼び止めたのは何も説教の為では無いのだ。 カツィア え?私に御用事ですか? 戒莉 君の妹、薙奈ちゃんだったかね? そろそろどうかと思ってね…。 カツィア そろそろと申しますと……修行…の事でしょうか? 戒莉 うむ。君の妹ももうじき10歳の誕生日だろう。 早い子は8歳くらいから既に修行を行っているしな。 カツィア それは…その、私が一人で決めてしまうのは…。 薙奈自身の意思を一番に尊重してあげたいもので…。 戒莉 そうか…。 カツィア それに、あの子はまだ病床の身です。 万が一ということも…考えたくは無いのですが…。 戒莉 修行は神への信心を試す試練のようなものです。 きっと強い心で臨めば神の加護もありましょうぞ。 それとも…シスターアカツィーアは神に何か疑念でも? カツィア そ、そんなことはありません! でも…やはり心配なものは心配なのです…。 戒莉 仕方あるまい、早くに両親を亡くした君にはたった一人の家族だからね。 カツィア 申し訳ございません、司祭様。 この事については今しばらく保留という事で…。 戒莉 あぁ、わかった。気が変わったらいつでも言ってくれたまえ。 カツィア はい…。それでは失礼します。 カツィア下手はけ 戒莉 ふむ…もう少し時間がかかりそうだね。 まぁ、時間はたっぷりある。 ゆっくり進めて行こうじゃないか…。 フォン上手はけ フォン ただいま戻りました。 戒莉 あぁ、おかえりフォン君。 いやすまないね、突然言伝など。 フォン いえ、構わないのですがシスターアカツィーアが…。 戒莉 あぁ、彼女になら先ほど私から切り出しておいた。 フォン どうでしたか? 戒莉 なかなかどうして、落とし辛そうだ。 フォン それなら…力ずくでも…。 戒莉 そう不穏な事は言うものではないぞ。 それに、できることなら穏便に済ませたかろう? フォン それもそうですね。 戒莉 それにもし…コレが表に出てしまえば… 君も私も二度と日の光を浴びる事は叶わなくなるのだよ? フォン ふ、あなたは怖いお方だ。 戒莉 そういう私について来ている君も、 正気とは思えんがなぁ?ん? フォン ははは、それもそうですね。 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------ 第四章【黄泉子・戒莉・フォン】 ------------------------------------------------------------------ 戒莉板付き 道化 【溶明】 【ジュノー郊外・教会】 フォン上手入り フォン 司祭様、周辺の住人が修行に対して不信感を募らせています。 戒莉 ほう? フォン 長すぎる期間、明確でない修行地、その内容etc…。 このままでは大きな抗議運動が起こってしまうかもしれません。 戒莉 ふぅむ…計画を早めるか…。 フォン 何落ち着いてるんですか! アレがバレたら私もあなたも、ただでは済まないのですよ!? 戒莉 焦って事を仕損じても仕方なかろう。 何事もスマートに、だよ?フォン君。 フォン …失礼しました。 それで、その落ち着きぶりですと何かしらお考えで? 戒莉 あぁ、もちろん。こういう日がいつか来るとは思っていたからね。 準備はしてあるのだよ。 フォン どのようなものを? 戒莉 誰もが納得する、教会の、我々の消え方さ。 そう、我々は不幸な事故によって教会と共にここに眠る事になるのだよ。 フォン 表向きは…ですね? 戒莉 そう。そして裏で我々は別の場所で、別の名前で、また繰り返していく。 フォン やはりあなたは怖いお方だ。 戒莉 そろそろそれも聞き飽きたものだね。 黄泉子上手入り 黄泉子 ごめんくださーい? 戒莉 おや、珍しいお客さんですな。聖ルーイン教会にようこそ。 フォン おや、あなたは…シスターアカツィーアの家に居た…。 黄泉子 すいません、突然お邪魔してしまって。 この街の教会を見ておきたくて…ご迷惑でしたらすぐ立ち去りますが…。 戒莉 あぁ、いや構いませんよ。 それで、何か懺悔でもございましたか? 黄泉子 いえ、ただ、この建物を見たかっただけでして。 フォン この教会は見世物では…。 戒莉 フォン君、いいではないですか。神の啓示を皆に伝えるべき神聖な場所。 それをわざわざ拝観に来た方です、無下にあしらう事もないでしょう。 フォン …はい、失礼しました。 戒莉 それでは私は午後の礼拝がありますのでこれで。 黄泉子 あ、はい。 戒莉 貴女に神の加護があらんことを。 戒莉下手はけ フォン はぁ…まぁ、司祭様があぁ仰ったのだ。 好きなだけ見てってくれて構わない。 あぁ、ただ礼拝堂は今の時間は関係者以外立ち入り禁止だ。 いいかね? 黄泉子 はい、ありがとうございます。 フォン それでは私も失礼するよ。 アーメン。 フォン下手はけ 黄泉子 ……教会…なんだよね? なんだろ…随分暗い気がする…。 それに、なんだろ?どこか不自然な構造…。 防音なのかな?外の音が全然聞こえないや。 わかんないけど…なんか嫌な感じ…。 それにさっき私が声かける前の会話…。 ………何かあるなぁ…。 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------ 第五章【黄泉子・カツィア・薙奈】 ------------------------------------------------------------------ 薙奈板付き 道化 【溶明】 【滞在二日目・夜】 カツィア下手入り カツィア ただいまー。 薙奈 おかえりなさーい!! カツィア ただいま、薙奈。 あら、黄泉子さんは? 薙奈 お姉さんなら街をさんぽしてくるって言って まだ帰ってきてないよー? カツィア そう…もう日も沈むのに…。 薙奈 なんで夜お外に出ちゃだめなの? カツィア 教会の司祭様が言っていたのよ。 夜は悪魔が支配する時間だから、夜外に出ると悪魔に取り憑かれてしまうの。 そうなった人は、悪い事ばかりして、天国に行けなくなるのよ。 薙奈 天国に行けない人はどこに行くの? カツィア 地獄ってすごい怖いところよ。 だからね、夜出歩いちゃダメなの。わかった? 薙奈 うん、わかったー! カツィア うん、よろしい。 今日何か変わった事あったりした? 薙奈 うんとねー お姉さんにお外の話をいっぱいしてもらった! カツィア そう、それは良かったわね…。 楽しかった? 薙奈 うん!! 黄泉子下手入り 黄泉子 ただいま戻りました。 カツィア おかえりなさい。 薙奈 おかえりなさーい!! 黄泉子 ただいま薙奈ちゃん。 カツィア 街の様子はどうだったかしら? 黄泉子 すごいですね。科学と魔法が入り乱れたような感じで。 今まで見てきた街の中でも特に面白い街です。 カツィア 好感だったようで良かったわ。 黄泉子 教会にも行ってみたんですが…その、少しお聞きしたい事が…。 カツィア はい、何かしら? 黄泉子 教会で「修行」という言葉を聞いたもので…。 カツィア …薙奈、ちょっとお部屋に戻っててくれるかしら? 薙奈 どうしたのー? カツィア ちょっとお姉ちゃん黄泉子さんと二人でお話がしたいの。 薙奈も今日お話してもらったんでしょ?お姉ちゃんもお話したいのよ。 薙奈 んー…わかった。 薙奈だけじゃずるいもんね。 カツィア 良い子ね。お夕飯ができたら呼ぶわ。 薙奈 うんー。 それじゃお部屋に戻るね。 薙奈上手はけ カツィア それで…どんな事をお聞きしたいのかしら? 黄泉子 色々聞きたい事もありますが… その修行に行って、今まで帰って来た人はいるんですか? カツィア …私はまだ働かせていただいてから短いので、 なんとも言えませんが…居ないと思います。 黄泉子 ……そう、ですか。 カツィア それがどうかなさったのですか? 黄泉子 いえ、少し修行に興味があっただけです。 あぁ、あと。 カツィア まだ何か? 黄泉子 夜は悪魔の支配する世界、司祭様が仰られたんですか? カツィア えぇ。司祭様の言葉は尊き神の言葉ですから。 その教えは絶対ですわ。 黄泉子 そうですか…。ありがとうございます。 カツィア どうかなさったのですか? 黄泉子 いえ、気にしないで下さい。 そうだ…この街に旅の扉を開ける方は居ますか? カツィア 故郷でも恋しくなりまして? 黄泉子 ちょっと手紙を出したいのですが…何分急ぎの手紙なので。 カツィア なるほど。 そうですわね、たしか一人居たと思いますわ。 明日にでも連絡してみましょう。 黄泉子 ありがとうございます。 カツィア さ、て。それじゃあお夕飯の支度をしましょう。 黄泉子 あ、手伝いますよ。 カツィア それじゃあ今日もお皿のほう願いしますわね。 黄泉子 はい。 道化 【暗転】 ------------------------------------------------------------------ 第六章【黄泉子・薙奈・戒莉・フォン・華澄】 ------------------------------------------------------------------ 戒莉板付き 道化 【溶明】 【滞在三日目・夜:ジュノー郊外・教会】 戒莉 まったく…フォン君は何をやっているんだ。 時間を23分47秒も過ぎてるじゃないか…。 フォン・薙奈上手入り フォン ほら、大人しくして! 薙奈 やーなのー!! フォン 大人の言う事は聞くものなんだ! 薙奈 やー!おじさんきらいーー!! 戒莉 これはどういうことだねフォン君? スマートに事を成せと言っているのに…。 フォン しょうがないじゃないですか! 寝てるの攫ってきたら途中で起きちゃったんですよ! 戒莉 そんなものクロロホルムでも吸わせればいいではないか。 フォン そんなの準備してないですよ! 薙奈 やー!おねーちゃーーーん!! 戒莉 むぅ、とにかく五月蝿いから黙らせたまえ。 フォン はいはい…ちょっとごめんよ。 薙奈 にゃっ!!(毒瓶 ……すー…すー…。 戒莉 全く…君は準備も何もしないで行ったのか。 どんな時でも万全の準備を怠るべきではないだろうに。 フォン はい、以後肝に銘じておきます。はぁ…。 戒莉 ん、どうしたかねため息などついて。 フォン なんでもありません。 戒莉 そうか?ストレス等は体にも悪影響を及ぼすからな。 たまにはしっかり休んでおきたまえ。 フォン あなたが仕事次から次に増やすんじゃないですか…。 戒莉 何か? フォン なんでもありません。 戒莉 ところで。 フォン はい? 戒莉 ここまで誰にもバレずに来たかね? フォン そのはずです。カツィアもあの旅人も熟睡してましたからね。 この子が起きたのも教会の近くでしたし気付かれてはいないかと…。 戒莉 ふむ…ならば… そこに居るのは誰だね? フォン え? 黄泉子上手入り 黄泉子 バレてましたか。 フォン そんな、お前は!確かに寝てたはず!? 黄泉子 えぇ、寝てましたよ。狸寝入り。 フォン なっ…! 黄泉子 薙奈ちゃんに何をしようとしていたかはわかりませんが…。 この子は返してもらいます。あなた達がどうこうしていい子ではありません。 戒莉 フォン君、そういうことだ。 君はまんまと騙され、その上この場所に招かれざる客を迎えてしまった。 これは責任重大だなぁ、フォン君? フォン か…戒莉様…ど、どうか…。 戒莉 あぁわかっているとも。 彼女を始末しろ。そうしたら懲罰は無しとしよう。 フォン …戒莉様の寛大なお心に感謝します。 と言うわけで…死ねぇぇぇぇ!! 黄泉子・フォン殺陣(黄泉子圧勝 黄泉子 まったく…教会の方にしては荒っぽいんですね。 戒莉 フォン君、何をしている。 フォン だ、ダメだ…勝てない…強すぎますよ…。 戒莉 …まったく。 ゴロツキだった君を拾ってやってここまで面倒見てきたというのに… 犬の方がまだ主人に従順だな。 フォン え 戒莉、フォンに攻撃スキル フォン蝶飛び 戒莉 ふぅ、屑はどこまで行っても屑だな。 黄泉子 …ひどい。仮にもあなたの部下でしょう? なんで、そんな切り捨てるみたいに…。 戒莉 部下?ふふふ…はっはははははは!! 黄泉子 何がおかしいの? 戒莉 アレは部下などではない。私の道具だよ。 道具は使えなくなったら捨てる。違うかね? 黄泉子 …道具じゃない。どんなに悪い事してたって…人間は道具なんかじゃない! 戒莉 ふん、吼えるじゃなかお嬢さん。 だがな、私にとってこの世界は「使える道具」と「使えない道具」 この二つの集まりでしかないのだ。 黄泉子 …なんでそんな悲しい考え方を…? 戒莉 悲しい?合理的と言ってくれたまえ。 そうだな…例えば相手を対等に見て助力をさせてみたまえ。 情が沸いたらどうする?効率を下げるような者でも切る事ができない。 それこそ非効率的だ。 黄泉子 非効率でも…その人を信頼してるなら…。 戒莉 信頼なぞ、足枷でしかない。そんなモノがあるからこそ人間は進歩しないのだ。 だから私は愚民から秀でる為に、人を見下し、知識を伴侶とした。 黄泉子 そしてその結果がコレですか…? 戒莉 あぁ、コレが今までの私の集大成だ。素晴らしいだろう? コレはねぇ、人間を生きたままに何年も保存できるんだ。 黄泉子 居なくなった人は皆その中なんですね。 でも…なんの為に? 戒莉 何の為…?決まってるじゃないか。私の為だよ!! 私の中の知識は豊富だ。だがまだだ!まだ足りない!! 全ての知識を手に入れるには人間の寿命では短すぎるのだよ。 黄泉子 まさか…。 戒莉 おや、気付いたかね?少しは頭が回るようだ。 そう、私は古くなった体を捨てて、彼らから新しい体を拝借する。 そして何年も、何十年も、何百年も生き永らえる。 黄泉子 そんなの非道い! 戒莉 何を言うか。私が知識を手に入れる為には必要なことなのだよ。 全ての知識を手に入れる…それはとても崇高なことだ…。 黄泉子 人の想いを踏みにじって何が崇高なんですかっ! 戒莉 言っただろう?私以外の人間は道具なのだよ。 第一他人の想いなどを考えて私になんの得がある? 黄泉子 損得で考える事自体間違いなんです! なんで、なんでそんな考え方しかできないんですか? 戒莉 私には知識が全てなのだよ。 愛すべき伴侶であり、追い求めるべき目標であり、集めるべき宝なのだ。 知識を探求すること…それが私の全てなのだ。 黄泉子 その為なら他の人を踏み台にしようが千切り捨てようが構わないと? 戒莉 無論だ。 黄泉子 そんなの…間違ってる! あなたが踏み台にしたり、捨ててきた人の幸せはどうなるの? 掴めるはずだった明日はどうなるの!? 戒莉 知った事か。道具の事など、心配してどうする? 黄泉子 ……じゃあ…あなたはそんなことをして幸せなの? 戒莉 なんだと…? 黄泉子 自分の手を血で汚し続け、世間から悪事と呼ばれる行為を続け… それでも幸せと言い切れるの? あなたの人生に終わりが来た時幸せだったと言えるの? 戒莉 な、何を言っている?私にとって知識は全てなのだぞ? 知識の為ならどんなことをしようと幸せだ…幸せなんだ!! それに…私に終わりなど来ない!私は何時までも生き続ける! 黄泉子 …嘘、ついてますね。 戒莉 な、なんのことだっ!? 黄泉子 一瞬、間があったじゃないですか。 そんなに自分に嘘ついて楽しいですか…? 戒莉 …違う…嘘など…嘘などついれいない…私は、私は…! えぇい、もう貴様なんぞと語る舌などない!! 不愉快だ、今ここで貴様という存在を消し去ってくれる!! 黄泉子 …戦らなきゃ…ダメなんですね。 戒莉 私の記憶から、私の歴史から貴様を消し去る!! 欠片すら残すものか!! 黄泉子 (お姉ちゃん…帰れなかったら…ごめんね) あなたなんかに生き死にを左右されるのはゴメンです! 黄泉子気孔 黄泉子・戒莉殺陣(戒莉優勢 戒莉 どうした?最初の威勢はどこ行ったのかね? 黄泉子 く…。 戒莉 まぁ当然か。生まれて十数年の小娘が私に勝とうなど…絵空事もいい所だ。 知識の量も、経験の量も、全てにおいて私が勝っているのだからな。 黄泉子 …勝ってるからなんなんですか? 戒莉 …なんだと? 黄泉子 力が強ければ幸せになれるんですか? 知識が多ければ幸せになれるんですか!? 戒莉 またその事か。他の者など知らん。 私は、知識の為の行い全てが私の幸せなのだ。 大体、人の幸せなどそれぞれだろう? 黄泉子 ……そうですね。 戒莉 さて、この世界とのお別れをしたまえ。 いい加減君の顔も見飽きたよ。 死にたまえ。 華澄 そこまでだ。(客席 戒莉 誰だ!? 華澄舞台入り 華澄 誰だ、と聞かれたら答えないわけにはいかねぇよなぁ? 俺はプロンテラ王室近衛騎士団が団長、華澄。 あんたを断罪する為に呼ばれたのさ。 黄泉子 王室騎士団…? 華澄 そ、過去の名誉騎士・藤丸さんの要請でね。 戒莉 プロンテラだと?ここはシュバルツバルドの管轄だろう。 なぜミッドガルド側がしゃしゃり出てくる? 華澄 そりゃあんたの気にする事じゃない。こっちの都合だ。 それよりも自分の身を案じた方がいいぜ? 戒莉 ふん、お前の様な若輩者が私をどうにかできるとでも? 華澄 どう思おうが構わん。が。 騎士団長の肩書き、舐めて痛い目見ても知らんぞ? 戒莉 弱い犬ほどよく吼えるとは言ったものだ。 今なら先の言葉の撤回を許すぞ? 華澄 ふん、そんな恥知らずなことできっかよ。 証明してやるさ、この剣に賭けてな。 戒莉 ふん、今にその口、塞いでくれる!! 戒莉・華澄殺陣(華澄勝利 華澄 どうした?俺を黙らせるんだろ? 戒莉 馬鹿な…こんなことがあってたまるか…。 私が負けるなんて…こんな…小僧に…。 華澄 なーんか勘違いしてねぇか?時間なんか関係ないんだよ。 いくらあんたが長生きしてようが俺はあんたに負ける気なんかねぇ。 戒莉 何故だ…何故だ何故だ何故だ!? 私には知識群と力があるのに!!何故貴様のような者に負ける!? 黄泉子 あなたは…人の想いを蔑ろにしすぎたんです。 人は、想いの力で本来の力の何倍も頑張れるんです。 戒莉 そんなもので…私が敗れたのか…? 華澄 そんなもの、と思ってる内はあんたにはわからん。 さて、一応手加減はしたが、これ以上抵抗するなら…。 戒莉 命は無い…とでも言うのか? 華澄 そういうこと。どうする?投降するならこれ以上剣を交えようとはしない。 戒莉 ………わかった。 華澄 おや、物分りが案外いいのな。ま、手間が省けて助かるけどな。 そっちの小さい子は大丈夫なのか?(黄泉子側を向いて 黄泉子 あ、はい。眠ってるだけで… 戒莉 …わかったよ…そうだ、そうだ… ……私の邪魔をしたお前達が悪いのだ…! 華澄 往生際が悪いぜ。まだ抵抗する気か? 戒莉MS詠唱 戒莉 その身で償え!私の道を阻んだ事を!! 華澄 なんだよ、その魔力…?此処諸共吹き飛ばす気か!? 戒莉 貴様らも、私の汚点も、みんな消えて無くなってしまえ!! 黄泉子 この…わからずやぁ!! 黄泉子、戒莉にMB 戒莉毒瓶 戒莉 ゴフッ… 華澄 お手柄だなお嬢ちゃん。いや、黄泉子ちゃんか。 しかし、今のは効いただろ。 戒莉 こんなとこで終わるわけ…には… !エモ 体が…動かな…だめ…だ…わた…私はまだ… 知…識……ちし…きがたり…な… 黄泉子 死んじゃった…の? 華澄 あぁ、あっけないもんだな。 …知識の都で知識に溺れ死ぬ、か。皮肉なもんだ。 黄泉子 ……この人は本当に幸せだったのかな? 華澄 さぁな。それはこいつしかわからんだろう。 知識を追い求めるあまりに道を外したが…自分の信じた道だったなら …後悔したってしょうがないだろう。 黄泉子 …でも、なんか可哀想…。 華澄 黄泉子ちゃんは良い子だな。 黄泉子 え? 華澄 人の痛みを自分の事のように思える。どっかで聞いた台詞だな…。 黄泉子 ……だって悲しいものは悲しいです。 華澄 ま、逝っちまった奴の事は仕方が無い。 大事なのは今、これからさ。疲れただろ? 黄泉子 あ、はい…でもそれよりも薙奈ちゃんが…。 華澄 あぁ、その子なら騎士団が責任持って家に送り届けよう。 君もだ。おっかないお姉さんが心配していた。一度実家に戻りたまえ。 黄泉子 そう、ですか。 華澄 血相変えて騎士団に飛び込んできたのは驚いたがな。 妹思いのいいお姉さんだ。家までは騎士団の者が同行しよう。 黄泉子 …はい、ありがとうございます。 道化 【暗転】 こうして、教会の裏に隠された計画は潰えました。 薙奈は無事アカツィーアの元へと戻り、囚われていた人々も解放されます。 それと同時に、黄泉子はジュノーを去りました。 アカツィーアと薙奈に宛てた手紙を残して…… ------------------------------------------------------------------ エピローグ【黄泉子・藤丸・忍】 ------------------------------------------------------------------ 藤丸板付き 道化 【溶明】 藤丸 大丈夫かなー…黄泉子にもしものことがあったら… あの騎士団長のガキぼてくりかましてやるんだから。 あー…心配で心配で一日五食しか喉を通らない!! 黄泉子下手入り 黄泉子 ただいまー。 藤丸 黄泉子!?無事だったの!! 黄泉子 えと、お姉ちゃんごめ…ムギュ 藤丸 黄泉子心配したんだよぉ!! 黄泉子がもう帰って来ないんじゃないかとか! あぁもう、こうやって触れる事すら叶わないんじゃないかと!! 黄泉子 お姉ちゃん、ちょっと苦しい…。 藤丸 っは、ごめん黄泉子。 とりあえずおかえり。 黄泉子 うん、ただいま。 藤丸 なんとか騎士団は間に合ったみたいね。 まさか昔のコネがこんな事で役立つなんてね。 黄泉子 うん。…お姉ちゃんが呼んでくれたって聞いたけど…。 藤丸 そりゃそうよー。 もう会えないかも、みたいな手紙出されたら いても立ってもいられないわよ。 黄泉子 どうして場所わかったの? 藤丸 馬鹿ねぇ。手紙の消印よ。 黄泉子 あっ。 藤丸 ジュノーに居る事はわかったからね。 あとは適当に怪しいところ探せばBINGO、よ。 黄泉子 そっか。 藤丸 …辛かった? 黄泉子 …よくわかんない…。 でも…すごく、哀しかった…。 藤丸 うん。 黄泉子 お姉ちゃん…人はどうしてみんな幸せになれないの…。 藤丸 難しい質問ね。恐らく、答えは出せないわ。 黄泉子 なんで…ひっぐ…ぇぐ…。 藤丸 でもね、黄泉子。 幸せって言うのは他人が決めることじゃないの。 その人が幸せだと胸を張れるなら…その人は幸せだったのよ。 黄泉子 …よくわかんないよ。 藤丸 うん、今はまだ、わかんなくていいよ。 まったく、大きくなったと思ったけどまだまだ子供ねぇ。 黄泉子 そんな、わ、私もう一人前だよ…多分。 藤丸 そういうところがお子様なの。 ま、黄泉子らしいけどね。 黄泉子 うー…。 藤丸 んーもぅ、黄泉子は可愛いなぁ、もう!! はぐはぐ 黄泉子 は、はわわ!? 藤丸 忍が居なくて良かったわー。 黄泉子独り占め('∀`*) 黄泉子 あ、そういえば忍さんは? 藤丸 また趣味の放浪よ。まったく、家に寄り付かないんだから。 たまーに特産品と一緒に写真送ってくるんだけどねー。 黄泉子 忍さんも旅好きなんだね。 藤丸 どうだか。動いてないと死んじゃうんじゃない? まったく…待たされる方の身にもなってほしいわね。 黄泉子 あはは。 藤丸 な、何よ?いきなり笑い出して? 黄泉子 うぅん、やっぱりお姉ちゃん、忍さんのこと大好きなんだね。 藤丸 な、ななななな何を言い出すのいきなり!? 黄泉子 お姉ちゃん耳まで真っ赤だよ。 藤丸 こ、これはちがっ…!あぁもう!! 黄泉子なんか今日夕ご飯抜き! 黄泉子 えぇ!そんなのひどいよー!! 藤丸 お姉ちゃんを辱めた罰!問答無用!! 黄泉子 ふぇ、お願いだからそれはやめて〜! 藤丸 まったくもー…そりゃ…好きだけど…モゴモゴ… 黄泉子 ふぇ? 藤丸 なんでもない!! はぁ…あ、そうだ。黄泉子? 黄泉子 うん? 藤丸 しばらくしたら、また旅に戻るの? 黄泉子 う、うん…。そのつもりではいるんだけど…。 藤丸 そっか。 黄泉子 あの…やっぱり…家に居たほうがいい…? 藤丸 んー?馬鹿ねぇ。黄泉子がしたいと思うことをすればいいのよ。 黄泉子が楽しければ私も楽しいし、 黄泉子が幸せならお姉ちゃんも幸せなんだから。 いっちょ前に人の事なんか心配しなくていーの。 黄泉子 でも…。 藤丸 くどいよ、黄泉子。 黄泉子はやりたいことをしなさい。もっと色々な世界を見てきなさい。 もっと素敵な世界に触れてきなさい。それがお姉ちゃんの願い。わかった? 黄泉子 …うん。 藤丸 あ、でも時々写真とかお土産送りなさいよ? 何もないのは流石に寂しいからね。 黄泉子 …うん! 藤丸 それじゃ夕飯の準備しよっか。 黄泉子 久しぶりにお手伝いするよ! 藤丸 そう?それじゃあ… 黄泉子 なんでもやるよー! 藤丸 熊の解体頼める? 黄泉子 …熊!? 藤丸 熊。 黄泉子 なんで熊…? 藤丸 今日山行って捕ってきたのよ。 冬眠明けだから脂肪少なくて身が引き締まってるわよ。 黄泉子 あ、あははは…。 やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだね。 藤丸 うん? 黄泉子 なんでもないよ。 藤丸 ? 道化 【暗転】 やっぱり…少しだけ甘えん坊は残ってたみたいですね。 こんな黄泉子の足跡は、これからも延びていきます。 もし貴方が何処かで黄泉子に会ったのなら… その時は思い切って話しかけてみてください。 もしかしたら、貴方の知らない世界のお話が聞けるかもしれません。 【閉幕】