道化 【溶明】 大陸から東の方向に離れた場所にぽっかりと浮かぶ、小さな孤島。 その中央には不思議な結界で守られた大きな屋敷。 孤島と屋敷。 まるで何かから護る様に、隠すように。 そこにいるのは・・・? 【暗転】 【Definition of Freedom】開幕 ---------------------------------------------------------------------- 第一幕 キティ、朱鷺司、ティキ ---------------------------------------------------------------------- 道化 【屋敷・門前】 キティ、下手より入る キティ ・・・ここかぁ。 しっかしなんでこんな辺鄙なトコに住んでるかな。 ここに来るまでにどれほど苦労したことか・・・。 ・・・。 愚痴っても仕方ないか。 すみませーん!どなたかいらっしゃいませんかー? ・・・。 へんじがない ただの しかばねのようだ。 朱鷺司、下手より入る 朱鷺司 死んでないから。 キティ Σ( ̄□ ̄;)!!?? あら、聞いてましたの・・・? 朱鷺司 ・・・どのような御用件で? キティ えぇと、本日からこちらで働かせていただくキティと申す者ですが。 朱鷺司 あぁ。新しいメイドの方ですね。 私は執事頭の朱鷺司。どうぞよろしく。 キティ よろしくお願いします! 朱鷺司 では。 これから仕えていただく主人のもとに行く前に・・・。 キティ 前に? 朱鷺司 テストをします。 キティ えぇ!? 聞いてないんですけど! 朱鷺司 そりゃそんなこと書いてたら来ないでしょうに。 キティ う゛・・・。 朱鷺司 さぁ、始めますよー。 では、第一問。 √1296+√144=? キティ って、数学かああああああ! 朱鷺司 おや?答えられませんか? 簡単だと思うのですが。 無理と言うならば、この話はなかったことに・・・。 キティ ちょ、待って・・・。 ・・・えぇと・・・、これが・・・こうなって・・・。 これは・・・二乗だから・・・。 ・・・48? 朱鷺司 正解です。 簡単すぎましたかな? キティ いや全然簡単じゃないから。 朱鷺司 いやぁ、簡単でしょう。 では、次いきますよ。 第二問。 アークエンジェリングが使用するスキルを3つ、答えなさい。 キティ ぶ。 アクエンとか最近見てないから覚えてないのに・・・! 朱鷺司 昔はよく見たでしょう。 キティ ・・・確か。 (適当に3つ答えてください) 朱鷺司 なかなかやりますね・・・。 キティ |ー`;).o0(今のであってたんだ 朱鷺司 では、第三問! 血液型がA型とB型の親から生まれる子供の血液型の確立は、 A型:B型:AB型:O型=? キティ 遺伝の問題なんてわかるかあああああああああ! じゃなくて。 確実からかってますよね? 朱鷺司 やはりそう感じますか? キティ そう思うなってほうが無理があるかと。 てか、見てる方が飽きると思いますよ。 朱鷺司 ふむ。 大抵の方は一問目でそれに気付いてましたよ。 キティ Σ( ̄□ ̄;)!! どうせ・・・、気付くの遅いニブチンだもん・・・。 いいよ、もう皆から鈍くさい言われてるしさ。 どうせ、どうせ・・・。ブツブツ・・・。 朱鷺司 なかなか面白い娘だな。 これならあの方も・・・。 キティ 何か言いました? 朱鷺司 いえ、何も。 では屋敷の中を案内します。 ここは無駄に広いので迷わないように。 キティ 無駄って・・・。 朱鷺司 事実ですから。 キティ ・・・あなたって本当にこの屋敷に仕えてる人? 朱鷺司 屋敷、と言うより・・・。 ティキ、下手より入る ティキ 隙ありいいいいいいい! ティキ、朱鷺司に攻撃スキル 朱鷺司は簡単に避けて 朱鷺司 ・・・通算999戦999勝、と。 あと1勝で大台突破ですね。 ティキ 数えてんなよ、バカっ! キティ 何その数!? 朱鷺司 キティ。こちらが私たちの主人のティキ様です。 キティ スルーされたっ。 って、こんな子供が!? ティキ お前も子供じゃん。 キティ これでも16よ! ティキ ん。俺と2コしか違わないし。 朱鷺司 |ω・`).o0(私から見れば2人とも子供・・・ ティキ で、朱鷺司。コイツ誰? 朱鷺司 新しく入ったメイドのキティです。 ティキ また新しい奴来たんだ。 今度はどれくらいもつかなー。 朱鷺司 本人を目の前にそのようなことを言うのは・・・。 ティキ いーじゃん。別に。 こういうこと気にするような奴ならここにいられないっしょ。 朱鷺司 ・・・そうですが。 ティキ 今までの"自称"図太い神経の持ち主だって、もって3ヶ月。 ・・・なぁ、朱鷺司。 朱鷺司 なんでしょう? ティキ コイツがどれくらいもつか賭けしようぜ。 朱鷺司 ・・・何を賭けるんですか。 ティキ そうだなー。 一か月分のおやつとか。 朱鷺司 そのようなことを言うから子供と言われるのですよ? ティキ !!! 俺は子供じゃない! キティ えーっと。 私のことは完全放置でしょうか? 朱鷺司 と、失礼。 では私はキティに屋敷の案内をしますので。 ティキ様は適当に遊んでてください。 キティ 適当って・・・。 ティキ 後で絶対賭けようなー。 キティだっけ?後で遊ぼうな。 ティキ、下手にはける キティ ・・・あの子が私たちの主人? 朱鷺司 はい。 キティ あんな子供が? 朱鷺司 そうですよ。 キティ ・・・なんであんな子供がこんなところに一人で? 親・・・、家族は? 朱鷺司 ・・・。知らなくていいことは多いものです。 キティ そ。ならいいです。 無理に知ろうとしなくてもいいことですしね。 朱鷺司 ・・・。 では、案内しますね。 キティ よろしくお願いします。 朱鷺司・キティ、上手にはける 道化 【暗転】 ---------------------------------------------------------------------- 第二幕 キティ、ティキ、朱鷺司 ---------------------------------------------------------------------- キティ、板付き 道化 【屋敷・食堂】 キティ ・・・仕えるべき主人は、ティキ1人。 他の面々は全て使用人。しかも入れ替わりが激しい・・・。 全部情報通り、ってわけね。 しっかし。 なんでこんなに使用人の量が多いの? 主人1人に対してこの数ってありえない・・・。 どうも情報以上に秘密がありそうね。 ティキ、下手より入る ティキ キティ、そんなことしてないで遊ぼうー。 キティ 今は仕事中。 後で遊んであげるから、もうちょっと待ってよ。 ティキ ぇー。 キティ えー、じゃないから。 私だって忙しいんだよ? それに仕事サボったら怒られるの私なんだから。 ティキ 朱鷺司には俺から言っておくからさー。 遊ぼうよー。 キティ だーめ。 仕事終わったら、ね? ティキ ・・・はーい。 ティキ、下手にはける キティ ・・・この状態でどうやって行動を起こせって言うのよ。 本部からは定期連絡もないし。 こっちから送った定期連絡の返事もない。 どうなってるの・・・。 ・・・まだ、ティキが私に懐いてくれたからマシかな。 毛嫌いされたら任務云々言ってられないしなぁ。 朱鷺司、下手より入る 朱鷺司 どうです?慣れましたかね。 キティ えぇ、まぁ。 やることは前についていた仕事とあまり変わらないので。 朱鷺司 そうですか。 ・・・考え事をするのはいいですが、手は止めないように。 キティ ! はい・・・。 朱鷺司 では。私も仕事の残りを片付けなければなので。 朱鷺司、下手にはける キティ ・・・見られていた? うぅん。そんなはずない。 気配がなかった。 ティキが来たときは気配でわかったのに・・・。 何者なの、朱鷺司って・・・。 不思議な人だな。 ティキ、上手より入る ティキ 隙ありいいいいいいい! ティキ、キティに攻撃スキル キティは簡単に避けて キティ 甘い! って、遊ぶのは後でって言ったでしょ! ティキ だってヒマなんだよー。 キティ 朱鷺司から出された課題はどうしたの? ティキ あんなの1時間もあればすぐ終わるって。 キティ あの量を1時間・・・。 無理な気がするんだけど。 ティキ いやー。いけるよー。 で、ヒマになったらからここにきたらキティは追い返すし・・・。 朱鷺司はなんか忙しそうにしてて相手してくれないし。 他の奴らは歯応えないから面白くないんだよ。 キティ 歯応えって・・・。 使用人の入れ替わりが激しいのって・・・、 もしかしてティキの"遊んで攻撃"のせいとか? ティキ そんなことないってw これ仕掛けてるのって今までの合わせても朱鷺司とキティにだけだし。 キティ ちょ。 なんでこんな新人に対してやるのよ! ティキ だって。 キティは戦うための力、持ってるでしょ? 今までの使用人とかってそっち方面てんで駄目でさぁ。 いつも朱鷺司にしかやれなかったんだ。 そんなときにキティがきたじゃん。 こりゃやるしかない、ってねw キティ ・・・なんで。 ティキ ん? キティ なんで、私が"戦うための力"を持ってると思ったの? ティキ んー。 空気、っていうのかな。 他の奴らとなんか違うんだよね。 キティの周りの空気ってさ。 朱鷺司のと近く感じるから、もしかして、って思ったんだ。 キティ 空気、か。 ティキも"戦うための力"ってのちゃんと持ってるんだね。 ティキ ? そうなのかな。 キティ そうじゃなきゃ、空気とかそんなのわかんないよ。 私もそれなりに戦う力は持ってる。 けど、朱鷺司ほどじゃないなぁ。 ちゃんと訓練したらティキも私を越えるよ。きっとw ティキ 訓練、かぁ。 朱鷺司になんとなくは教えてもらったけど・・・。 キティ 護身術程度でしょ? ・・・この屋敷・・・、島から出て大陸に行けば。 もっと強い力を手に入れられるよ。 ティキ 外・・・。 外に出るくらいなら、そんな力いらないや。 キティ え? ティキ 俺は外に出ちゃダメなんだって。 外に出ちゃうとみんなに迷惑がかかるって。 キティ 迷惑って・・・、どんな? ティキ わかんない。 でも、時々ここに来るおじさんとおばさんとかがいつも言ってた。 だから。出ちゃダメなんだ。 キティ ・・・。 ティキ ・・・あ。 仕事の邪魔してごめんね。 また後で遊ぼう! キティ あ・・・、うん。 また後でね。 ティキ それじゃ。仕事頑張って〜。 ティキ、下手にはける キティ 外に出ると迷惑がかかる、ね。 まさかあの情報って真実なわけ? でも・・・、信じられない。 あんな非常識な・・・。 朱鷺司、下手より入る 朱鷺司 ・・・今。 キティ ! 朱鷺司 今ここでティキ様と何を話していた? キティ あ、えっと・・・。 朱鷺司 ・・・まぁ、いい。 ティキ様に何かあるようなら・・・。 容赦はしない。 キティ ・・・っ! 朱鷺司、下手にはける キティ なんて、冷たい目・・・。 ・・・。 ティキも不思議な雰囲気があるけど。 朱鷺司・・・。 あんな強い"意思"を持つ人なんて・・・、初めてだ。 ここには、思っているより秘密がありそうね・・・。 道化 【暗転】 ---------------------------------------------------------------------- 第三幕 月奈、紗那、キティ、朱鷺司 ---------------------------------------------------------------------- 月奈、板付き 道化 【某所】 月奈 紗那。紗那は居るかしら? 10秒以内に出てこなければ明日は家畜の餌になりましてよ? 紗那、下手より入る 紗那 はい。お呼びですか? 月奈 今日も可愛いわね紗那。で、キティからの連絡はまだなのかしら? 紗那 いまだ何も。 月奈 まったく…油売りは命令に入っていませんわよ? 紗那 こちらからの呼びかけにもまったく返事がありません。 月奈 あら…何かしらの邪魔が入ってるというわけかしら? 紗那 可能性は否定できません。 あの島は不可思議な結界により護られています。 我々の"声"がそれにより届いていない可能性も・・・。 月奈 …面倒ですわね。紗那。 これからすぐあの島へ発ちなさい。 キティ、それと標的の様子を見てきて頂戴。勿論、異議は無いわよね? 紗那 了解しました。 紗那、下手にはける 月奈 ・・・不可侵の結界、ねぇ。厄介なものですわね。 道化 【暗転】 月奈はけて、キティ板付き 道化 【屋敷・裏庭】 キティ ・・・ダメ、か。 何が妨害してる? 何故妨害される? この結界は、いったい何・・・? 朱鷺司、下手より入る 朱鷺司 何をしているのです? キティ ・・・っ! また、か。 朱鷺司 ? 何が"また"なんですか? キティ 1つ、聞いていいですか? 朱鷺司 どうぞ。 キティ あなた、何者? 朱鷺司 ・・・。 ティルビア家に仕え、その長男であるティキ・ティルビア様の 世話を仰せつかっているだけの執事ですが? キティ ティルビア家・・・。 朱鷺司 これで満足ですかな? キティ 本当にそれだけ? 朱鷺司 えぇ。 キティ なら。 なんであなたは気配がないの? 確か、最初に会ったときは気配があった。 でも、屋敷の中に入ってから・・・。 気配が希薄になっている。 時々感じ取れないほどに。 朱鷺司 ・・・さすが。 "緋の泉"の一員だけはありますね。 キティ やっぱり知ってたんだ。 朱鷺司 動きを見ていればわかりますよ。 ・・・目的はなんだ? キティ この島の所有者、死んだのは知ってる? 朱鷺司 旦那様が、か・・・。 キティ 死んだってか、私が殺ったんだけどね。 で。 この島。所有権が"国"に移行したんだ。 ・・・これで言いたいこと、わかった? 朱鷺司 我々に出て行け、と。 キティ そういうこと。 ・・・驚かないのね。 朱鷺司 旦那様を手にかけたのがキティだということ、にかな? キティ そ。 普通なら多少なりとも驚くでしょ。 でも、アナタにはそれがまったくない。 朱鷺司 ・・・なんとなく、予感はしていたものでね。 キティ 予感、ね・・・。 朱鷺司 それで、他にも目的があるのだろう? キティ まぁね。 この結界の排除。まずはこれかな。 朱鷺司 ・・・。 キティ 結界を作った人物または装置の排除。そして新たな結界の生成・固定。 何か質問はある? 朱鷺司 質問はないな。 ただ。 キティ ただ? 朱鷺司 貴女には結界の排除は無理だ。 キティ ・・・何故そう言いきれるの? 朱鷺司 いずれ、わかるときが来る。 キティ まさか・・・。 ティキが・・・? 朱鷺司 ・・・。 朱鷺司、下手にはける キティ もし、ティキが結界の構成者だったら・・・。 ・・・、私には無理だ。 どうすれば・・・。 ・・・どうもこうも、それが私の任務。 何を迷っているんだ、こんな感情私には必要ない・・・! 紗那、上手より入る 紗那 そうだ、お前はただの"人形"だ。 キティ ・・・っ! 紗那・・・。 何故ここに? 紗那 音沙汰ないからな。 ・・・何かあったのかと思えば。 無駄な感情に流されたか。 キティ 違う! 紗那 何が違うと言うのだ? キティ それは・・・。 紗那 ・・・ふん。 まぁいい。 自分の役目を忘れるな。 キティ そんなの、わかってる・・・。 紗那 しかし・・・。 相互連絡ができなかったのはやはりこの結界か。 キティ ・・・妨害されてるんだ、やっぱり。 紗那 あぁ。 異物である私のことも排除しようとしている。 キティ ? そんな力の流れがあるの? 紗那 ・・・どうやらお前はこの結界の構成者に気に入られたようだな。 キティ ・・・。 気に入られてもさ。 私が排除するんでしょ。 そんなの、意味ないよ・・・。 紗那 ・・・。 私は一度戻る。 自分の役目、決して忘れるな。 紗那、上手にはける キティ 役目・・・。 そうだ。 私は、ただの"駒"の1つ。 迷うことなんて、ないんだ・・・。 ---------------------------------------------------------------------- 第四幕 キティ、ティキ、朱鷺司 ---------------------------------------------------------------------- ティキ、板付き 道化 【屋敷内・ティキの部屋】 ティキ ・・・よし。 これで終わり、っと。 まずどっちから行こうかなー。 ・・・やっぱりキティからだよな。 キティ、下手より入る ティキ あれ? キティ、仕事は? キティ ・・・。 ティキ ? 何かあった? キティ 1つ、質問があるの。 ティキ なに? キティ アナタの力って、何? ティキ ・・・え? キティ アナタは何かしらの力を持っている。 ・・・それは何? ティキ なんで、そんなこと・・・。 キティ お願い、答えて。 その返答次第で・・・。 ティキ そんなの、俺が聞きたいよ。 キティ ・・・。 ティキ 時々さ。自分で何やったか覚えてないんだ。 ・・・そういう時って、絶対誰かが傷ついてる。 俺がやったのかどうかも、わからない。 キティ それじゃ、質問を変えるね。 この、結界もアナタの力の一部なの? ティキ 結界? キティ わからないの? こんな強い力の流れ・・・。 ティキ ・・・わからないってーか。 物心つく前からここにいるんだから、認知できるかどうか・・・。 キティ ・・・あぁ、そっか。 なら。 アナタを排除すればわかるね。 ティキ え? キティ ごめんね、ティキ。 今まで楽しかったよ。 ティキ ・・・っ!? 朱鷺司、下手より入る 朱鷺司 待て! キティ ・・・邪魔するの? 朱鷺司 ティキ様から離れろ。 キティ それは無理。 私は私の役目を果たさなきゃ。 朱鷺司 では。 私も私の役目を果たさねばならないか。 ティキ 2人とも、どうしたんだ・・・? キティ ・・・ティキ・・・。 私は・・・。 ティキ キティ・・・? キティ ・・・なんで。 人間って無駄な感情が多いんだろうね。 こんな感情、知りたくなかったのに・・・。 朱鷺司 キティ、まさか・・・。 キティ 私には、無理だよ。 ・・・ティキと一緒に居たい・・・。 でも・・・。 私の役目は、この結界を消し去ること。 それには・・・。 朱鷺司 結界の構成者はティキ様ではないぞ。 キティ もう、そんなの関係ない。 ティキが近くにいると、私がおかしくなる。 自分を保つため・・・、私が自分の役目を忘れないためにも。 ・・・ティキには消えてもらわなきゃ。 ティキさえいなくなれば・・・! 朱鷺司 いったいどこのどいつがそんな偏った教育をしたんだ? キティ ・・・、アナタには関係ないこと。 私は私の役目を果たす。 今やるべきことはこれだけ・・・。 朱鷺司 そうはさせない。 キティ !? この力・・・。 そうか。アナタが構成者だったんだ。 朱鷺司 私の役目は、ティキ様を護ること。 ティキ様に害を成すならば、どんな人物であろうと容赦はしない。 ティキ ちょっと待った! 朱鷺司 ティキ様? }同時に キティ ティキ? ティキ どーでもいいけど俺を抜いて話進めるな! まず。 朱鷺司、結界って何? 朱鷺司 簡潔にいいますと。 様々な力を封印してしまう物です。 簡易魔術であるWisが使えないのも、この結界の影響ですね。 ティキ それを朱鷺司が作ったの? 朱鷺司 作った、と言うのか・・・。 ・・・無意識のうちに展開している、と言ったほうが正しいですね。 ティキ んじゃ、キティ。 キティは何者?いったい何が目的? キティ ・・・。 朱鷺司 答えられないなら、私が代わりに言ってやろうか? キティ ! 朱鷺司 暗黒騎士団"緋の泉"所属、コードネーム"キティ" 彼女の任務は・・・、 キティ ・・・やめて・・・。 朱鷺司 この結界の排除と、新たな結界の生成・固定。 そして、 キティ やめて! 朱鷺司 この屋敷に存在する全ての者を排除すること。 ティキ ・・・! キティ、それ本当なのか・・・? キティ ・・・あーあ。 誰にも気付かれない自信、あったのになぁ。 知られちゃったから、仕方ないよね。 そういうことだから。 今までアリガトね、ティキ。 ティキ キティは、それでいいのか? キティ いいとか悪いとかじゃないんだよ。 私がいる組織って。 上からの命令は絶対。 だから、どんなことがあっても・・・。 ティキ 本当に? キティ ・・・、私はただの駒。人形。だから。 考えることは無意味なの。 ティキ 駒?人形?どこが? キティは人間だよ。 ちゃんと、強い意思を持ってる人間だ。 キティ ・・・なんで。 どうしてそう私を惑わすの? ようやく決心がついたのに・・・。 ティキ そんなに悩まないでさ。 自分が本当にやりたいことだけを考えればいいじゃん。 キティ そうできたら、いいよね。 でも、私には無理・・・。 ティキ なんで? キティ それは・・・。 朱鷺司 ・・・キティ。 今現在の"本心"はどうなんだ? キティ ・・・本心・・・。 ティキと、このまま一緒にいたいよ。 でも、私はそんなこと望んじゃダメなんだ・・・。 私は、ただの"駒"なんだから・・・。 ティキ だからー。 キティは駒なんかじゃないって。 ちゃーんとした人間でしょ? キティ うぅん。 私は、ただの駒なの。 この国の裏側で動くだけの、駒なんだよ。 ティキ ・・・なんで、そんなこと言うんだよ。 キティ 私は。 それ以外の自分を知らないから。 ・・・ティキはいいよね。 自由を、知ってる・・・。 ティキ 自由・・・、ってなんだろうな・・・。 キティ ・・・。 朱鷺司 キティ、1つだけ質問だ。 キティ 何? 朱鷺司 現状維持したいのか、上の命令に忠実に動くのか。 どちらを選ぶ? キティ 出来ることなら・・・、現状維持。 このまま、ティキと、一緒にいたい。 朱鷺司 ・・・わかった。 外の輩は排除しておく。 キティ え・・・? 朱鷺司 この結界は私自身と言っていいようなもの。 私が拒絶すれば、入れなくなるさ。 キティ ほんと、その結界って・・・。 侵入する側から見れば最悪の代物ね。 朱鷺司 中にいる側から見れば丁度いい、使い勝手のいい代物だがな。 キティ ・・・そうね。 朱鷺司 ・・・キティ。 もう一度、確認する。 キティ 何? 朱鷺司 このままでは上からの命令に逆らうことになる。 それでも、構わないな? キティ えぇ。 ・・・ティキと一緒にいられるなら、"緋の泉"から除隊されても構わない。 朱鷺司 わかった。 では、私は自室に戻りますので。 ティキ様は追加の課題をやっていてください。 ティキ えぇっ!? 朱鷺司 キティはその手伝いを。 キティ はい。 朱鷺司 では、失礼します。 朱鷺司、下手にはける ティキ ・・・。 キティ ほら。さっさと終わらせて遊ぶんじゃないの? ティキ キティさ。 キティ ん? ティキ 俺の力のこと気にしてたっぽいけど。 なんでそんなこと知りたいの? キティ ・・・この結界の構成者だと思ってたから、かなぁ。 ティキ そか・・・。 キティ ・・・。 ティキ じゃ、これ終わらせちゃおっか。 キティ ・・・そうね。 道化 【暗転】 ---------------------------------------------------------------------- 第五幕 月奈、紗那、キティ、ティキ、朱鷺司 ---------------------------------------------------------------------- 月奈、紗那板付き 道化 【某所】 月奈 あらあら…。 結界の力が増した…ですって? 紗那 はい。 それと、どうもキティが裏切ろうとしています。 月奈 あらあら…主人の命令も守れないなんて狗以下ですわね。 紗那 いかがなさいますか? 月奈 そういう意外性…嫌いじゃありませんわ。 けれども…。 上の方々も急いておりますし…仕方ありませんわよね。 ・・・使えない道具は捨てるしかないでしょう? 紗那 ! 月奈 貴方には結界中和の儀法を施した道具を差し上げますわ。 キティに代わり、結界の排除を行いなさい。 それが終わり次第、それ以降の動きの指示を出しますわ。 ・・・そうね、最優先事項は"キティ"。あの娘を消してきなさい。 失敗したら…ふふふ、その時はどうなるかは承知ですわよね? 紗那 ・・・っ! 了解しました・・・。 紗那、下手にはける 月奈 もう少し使える"駒"だと思ってましたのにね・・・。 まったく、黙って言う事聞いていればまだ生きていられましたのに。 ・・・馬鹿な娘ですわね。 道化 【暗転】 月奈、はける キティ、板付き 道化 【屋敷・中庭】 キティ ・・・この感じは。 朱鷺司、下手より入る 朱鷺司 キティ。 この空気は・・・。 キティ どうも痺れを切らしたみたいね。 ・・・多くの部下を引き連れて幹部クラスの奴が来るわ。 朱鷺司 知り合い、か。 キティ 知り合いってか・・・、一番気を許せた相手、かな。 朱鷺司 そんな相手と・・・。 キティ いいの。 覚悟してたことだから。 朱鷺司 ・・・。 そんな覚悟、しなくとも・・・。 キティ あの連中にしてみれば、私はただの駒。 別に、私がいなければいけない理由なんてない。 切り捨てる気になればすぐそうする連中だからね。 ・・・それに。 朱鷺司 それに? キティ 私はここでティキと朱鷺司と一緒にいることを決めたから。 だから、もういいんだ。 朱鷺司 そう、か・・・。 キティ 来る。 紗那、上手より入る 紗那 勘は鈍ってないようだな。 キティ そんな簡単に鈍ってたまるもんか、ってね。 どれだけそこにいたと思ってるのよ。 紗那 私がここにいる。 何故かは、わかっているな? キティ わかってるつもりよ。 だからといって素直に話を聞くとでも? 紗那 ふ。 駒がよく言う。 キティ ・・・私はもう駒じゃない。 自分なりに、自分の自由を知ることができた。 だから・・・。 紗那 自由、か・・・。 自由なんてな、この世に存在しないんだよ。 キティ ・・・。 朱鷺司 何故・・・。 何故貴様はここに存在できる? 紗那 結界のことか? 朱鷺司 私は今、全ての侵入者に対し"拒絶"の意を示している。 それにもかかわらず、だ。 貴様を含め数名、内部に存在できている。 ・・・あり得ないことだ。 紗那 人間のやることなんて、何かしら"穴"がある。 ただそれを突いてみただけさ。 キティ 紗那、・・・お願い。 ティキだけは、そっとしておいて。 紗那 それは無理な願いだな。 私の任務は、2つ。 結界の排除、新たな結界の生成・固定。 勿論これには"邪魔者の排除"も含まれている。 そして、"キティ"の排除だ。 キティ ・・・やっぱり、か。 紗那 覚悟はできているようだな。 ならば話は早い。 ・・・死んでもらう。 キティvs紗那殺陣 互角な感じで 朱鷺司 結界が機能していない、か・・・。 紗那 あぁ。 最初に来たころより断然動きやすくなっているな。 朱鷺司 キティ。 手を貸そう。 キティ え? 朱鷺司 どの道。コイツもティキ様に害を成すのだろう。 ならば早めに処分しておきたいものだ。 キティ そうね。 2人がかりならいけるかも。 紗那 ふん。 迷いごとを! キティ・朱鷺司vs紗那殺陣 紗那圧勝 紗那 真の力を見誤るとは。 堕ちたものだな・・・。 キティ くっ・・・。 紗那 まずは、・・・"キティ"の排除が最優先事項。 キティ・・・。 キティ ・・・。 紗那 こんな形が最後とは思いたくないが・・・。 さよならだ。 ティキ、下手より入る ティキ 朱鷺司ー。なんか空気が変なんだけど・・・。 って。 何この状況。 キティ なんとなく察して。 ティキ んーと。 キティと朱鷺司が怪我してて。 その2人の前にいるのが見たことない人。 って、ことは。 そこの人が悪い人? 朱鷺司 ティキ様っ! 逃げてください! ティキ え? 紗那 ふむ。 これが排除対象の1人か。 キティ ! ティキ、逃げて! 紗那 お前らは黙れ。 紗那、範囲攻撃スキルがあれば、2人に。ないなら、キティだけに攻撃スキル キティ く、・・・っ。 ティキ キティ! お前、なんてことするんだよ! 紗那 一度は貴様を殺そうとした輩を庇うのか。 ・・・愚かだな。 ティキ そんなの、関係ない。 キティも朱鷺司も大事な家族なんだ。 それなのに傷つけるなら、俺は許さない。 紗那 お前のような子供に・・・、 何が出来る! 紗那、朱鷺司に攻撃スキル 朱鷺司 ! 朱鷺司、蝶はけ キティ なっ! ティキ ・・・え? 紗那 ほぅら。 何も出来ない。 力を持っているからといって使いこなせなければ、無駄なこと。 ティキ 朱鷺司・・・? 紗那 順番が違えたが・・・。 次はお前の番だ。・・・キティ。 キティ っ! ティキ ・・・。 キティ ・・・ティキ? 紗那 ん。なんだ?怒ったか? キティ これは、結界が・・・、揺らいでる・・・? 紗那 消え去っていないのか、結界は。 止めを刺すのはキティの次でいい、な。 ティキ、紗那に攻撃スキル 紗那 何!? ティキ ・・・愚かな。 キティ ! ティキ・・・?違う。ティキじゃ、ない・・・。 ティキ 止め?貴様にそのようなこと、出来るとでも思うのか。 愚かな。 紗那 ふむ。 狂ったか。 ティキ 十二に砕かれた、我が力の一欠けら。 この子供の中に入り機を伺っていたが・・・。 どうも居心地がよくてな。 それを崩そうとするならば・・・。 キティ アナタが、ティキの力の正体? ティキ ・・・キティ、と言ったか。 下がっていろ。 紗那 ふん。 訳の分からぬことを。 ティキ 貴様は知らぬままでいいのだ。 ・・・ここで死ぬのだからな。 ティキvs紗那殺陣 ティキ圧勝で 紗那 な・・・! ティキ その程度か。 朱鷺司の痛み、思い知らせてやろう。 紗那 くっ・・・。 キティ やめて! ティキ ・・・何故、止める? キティ 貴方が、誰かは私にはわからない・・・。 でも、ティキの姿でそんなこと、して欲しくない! ティキ ふむ。 しかし、このままにしておけば、こいつ等はまたやって来ることになる。 ならば・・・。 キティ もっと強力な結界を張ればいいじゃない。 貴方のその力があれば、そんなこと容易いこと・・・。 紗那 ! そうはさせない! キティ 紗那! お願いだから、ここから去って。 もう私たちに関わらないで・・・。 紗那 貴様・・・、国を裏切るつもりか! キティ 国、か・・・。 私はその言葉に縛られてたんだよね。 でも、もう私は自由なんだ。 だから、国も"緋の泉"も関係ない。 ティキ 話は、まとまったか。 今はキティに免じて許してやろう。 ・・・もし、我らの前にまた来るようであれば、容赦はしない。 紗那 ・・・っ! ティキ さっさと消えろ。 紗那 く・・・。 紗那、上手にはける キティ ・・・ティキ。 ティキ 我が名は、・・・そうだな・・・ "L"と名乗っておこう。 この子供に我の存在を知らせるようなことは、決してするな。 キティ "L"・・・。わかった。 絶対に知らせない。 ・・・貴方は。 ティキ なんだ? キティ そんな強い力を持っているのに、何故ここから出て行こうとしないの? 何故"自由"を自ら捨ててしまっているの? ティキ "自由"にも様々な定義があるだろう。 過去の自分が今の我を見たら嘲笑うだろうな。 だが先程も言ったとおり、我は"現状"に満足している。 ・・・また戦いの中に身を投じなくとも済むからな。 キティ 自由の、定義か・・・。 みんな考え方は違うからかな。 ティキ そう言う事だ。 ・・・では、朱鷺司を迎えに行くか。 少なからず傷を負っているはずだからな。 キティ って。朱鷺司のこと忘れてた! 早く助けに行かないと! ティキ ・・・そうだな。 道化 【暗転】 ---------------------------------------------------------------------- 終幕 キティ、ティキ、朱鷺司 ---------------------------------------------------------------------- 朱鷺司、板付き 道化 【屋敷・中庭】 ティキ、下手より入る ティキ 隙ありいいいいいいい! ティキ、朱鷺司に攻撃スキル やっぱり避けて 朱鷺司 1000戦1000勝、と。 ティキ なんで避けるんだよ! 朱鷺司 当たると痛いじゃないですか。 キティ、下手より入る キティ ほら、遊んでないで。 朱鷺司にも仕事があるんだから、 ティキはおとなしくしてなさいって。 ティキ だってー。朱鷺司がー。 キティ だってじゃない。 朱鷺司だって病み上がりなんだから、あんまり歩き回らないでよ。 朱鷺司 ・・・わかっている。 キティ ほら。ティキは部屋に戻って課題の続きやってきて。 ティキ ぅ。 なんで課題途中ってわかるんだよ・・・。 キティ そりゃ、見てきたもの。 ティキ 勝手に部屋に入ったの!? キティ 勝手っていうか、掃除のためよ。 いいから、部屋に戻るー。 ティキ はーい。 ティキ、下手にはける キティ ・・・"L"は。 いったい何者なの? 朱鷺司 詳しくはわからない。 ただ、ティキ様の中にいる"L"は十二に砕かれた力の一つ。 そして、その残留思念だけ。 キティ て、ことは。 あんなのがあと十一いるわけ? 朱鷺司 いや。 "L"の話から行くと・・・、 残りの十一の欠片は一人の人間の中にあるらしい。 それと他に"L"の肉体と記憶、それぞれを持つ人間が一人ずつ。 キティ ・・・つまり。 ティキと同じような人間が他に三人、か。 朱鷺司 そうなるな・・・。 キティ でも、たった一欠片であの力。 全てが集まったら・・・。 朱鷺司 それをさせないための結界でもある。 キティ なるほど、ね・・・。 ティキ、上手より入る ティキ 隙ありいいいいいいい! ティキ、キティに攻撃スキル どうでもいいから避けて キティ だから! 課題やってきなさーい! 道化 【終幕】